売り手市場でも、やっぱり超大手企業は中小企業より高い
ここ数年、「売り手市場」と言われます。しかし、だれもが気づいてることですが、就活生のニーズと市場のニーズは必ずしもマッチしておりません。
2019年の新卒求人倍率は1.88ですが、この数字はすべての企業の求人をひっくるめての倍率です。求人倍率が10倍を超えてる外食産業、ヘルスケア、建築など、人手不足の業界もすべて足し合わせた求人数が1.88。
そこで、多くの就活生が希望している大手、つまり従業員1,000人以上の大企業の求人率をみてみますと、0.70倍。5,000人以上の超大企業の就職倍率にいたっては、0.37倍なんですね。(参考:リクルートワークス研究所「第35回 ワークス大卒求人倍率調査」)
文系の競争率は「理系の2倍」だった!
超大手企業の新卒求人倍数、0.37倍。
中小企業より高い倍率とはいえ、3人に1人以上が超大手に入れるって、思ったより簡単なんじゃあ——。一瞬でもそう思うと、就活生に怒られます!
この「0.37」という数字は、一般職や総合職、技能職すべてひっくるめた数字なのですよね。工学部機械専攻の人が技術系総合職に応募した場合の倍率と、文系の人が総合職に応募した場合では、それぞれの競争倍率はかなり異なっています。
各年度の採用状況調査によれば、採用数は、理系、文系はほぼ同数ぐらいですが、1~2年前から理系の採用者数が文系より増えております。(参考:日経新聞「理系採用7年ぶり文系超え、技術革新映す 19年度調査」)
ところが、文部科学省の「学校基本調査-平成30年度結果の概要ー」によると、就活生の人数でいえば、文系は理系の2倍いるのです。単純に、文系のほうが2倍の倍率ということになります。
人数比1対2で計算しますと、理系にとって超大手に入る確率は、0.56倍、つまり2人に1人になります。 文系にとっては0.27。つまり超大手に入れる文系就活生は4人に1人。ここでいう超大手とは、単純に従業員数5,000人以上の企業ですから、製造、小売り、流通、運輸、ヘルスケアまで含めます。(人気のマスコミ各社は、規模は中企業のところが多い)なんとなく実感できるのではないでしょうか。
この競争倍率は、企業規模が小さくなるにつれて下がっていきまして、中小企業では求人が10倍ぐらいになります。すべてひっくるめて、新聞メディアで喧伝されている売り手市場の1.88倍に収まるわけです。
AI時代に「一般事務職」は消えるのか?
就活生のなかには、激務高給の仕事より、定時に帰れて、転勤のない(注1)仕事を希望する人がいます。一般職、または一般事務職と呼ばれる採用枠です。こちらの職はRPA化(ロボティック・プロセス・オートメーション、事務作業の効率化と自動化)や、女性の勤続年数の長期化によって、年々採用数が減っております。
注1:日経スタイルの記事によると、大手損害保険会社のAIG損保は、2019年より転勤を希望制に変えたところ、新卒応募者が10倍となりました。
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