忌憚のない発言は私の専売特許
2010年の参議院議員選挙に出馬表明した谷亮子は、議員活動と並行しながら柔道の競技者として五輪出場を目指そうとしたが、その判断に対して「死ぬ気でやっている他の候補に失礼だと思います」と突っかかったのが、同じタイミングで立候補していた三原じゅん子だった。「忌憚のない発言といえば、それが私の専売特許のようになってしまいました」(三原じゅん子『生きたい』)と振り返るが、その専売特許を久方ぶりに披露したのが、先日、参議院本会議に提出された安倍晋三首相に対する問責決議案の反対討論だったということなのか。
「さすが女優!」的な声
国会の壇上で「尻ぬぐいをしてきた安倍内閣に感謝こそすれ、問責などとはまったくの常識外れだ。愚か者の所業とのそしりはまぬがれません」「恥を知りなさい」と野党を叱責した三原。それなりに練習したはずだが、あたかもその場で発生した激情であるかのような演技力を見せた。学校から早く帰ってきた夕方にテレビをつけたら再放送されていた時代劇のような古臭い台詞回しに、見ているこちらが赤面したが、身内では高評価されたようで、今週末に投開票を迎える参議院選挙のための政見放送に安倍首相の相手として抜擢されている。首相が「この前の三原さんの参議院本会議での演説は、すごい迫力でしたね。国民の代表としての自覚。国会で議論に臨む姿勢。非常に印象的でした」と述べると、満足そうな表情で受け止めていた。
偉い人に褒められて頭を垂れる様子は、当然、国民のために働いているのではなく、偉い人のために働いているのかな、と思わせる。「実るほど頭を垂るる稲穂かな」という句は、政治家になったばかりの三原が心に刻んだ言葉だが、議論から逃げ、相手を「愚か者」と叱責する様子を見ると、もう少し稲穂を見習ってほしいとは思う。あの反対討論に対し、「さすが女優!」的な声も飛び交ったが、その声を受け止めながら政見放送を見てみると、「しかし、一部の野党は……」「それに引き換え、野党は……」と述べる時に、話す前から顔の表情が固まっていて、女優らしい演技とは言えず、最前線で活躍されている女優に失礼である。
女工哀史ではなく女優哀史
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