「四六時中ウイスキーのことばかり考えている」というベンチャーウイスキーの肥土伊知郎社長
肥土は江戸時代に創業した造り酒屋に生まれた。
東京農業大学卒業後に入社したサントリーで企画や営業を経験し、数年後に実家に戻った。そこで目の当たりにしたのは、清酒の需要減と安売り競争にさらされ、経営難にあえぐ酒蔵の姿だった。
父が経営する蔵は戦後ウイスキー事業に参入し、蒸留所を保有していた。だが当時は全く売れず、樽は貯蔵庫で眠ったままだった。肥土はサントリーから戻った当時、その原酒を口にしたことがある。「それまで慣れ親しんだ、水割りでぐいぐい飲めるウイスキーとは全然違う」ことに驚いた。
ウイスキーの魅力に取り付かれ、本業とは別に都内のバーを訪ね歩いた。バーテンダーに原酒を飲んでもらい、感想を聞くためだ。
「個性的で面白い味」。そう褒められたが、あくまでもそれはプロの意見であり、消費者に受け入れられるかどうかは未知数だった。
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