2019年下半期は「研究者のエッセイ」がおすすめです

エッセイに見せかけて学術書で、だけどやっぱりエッセイ的で、新しい文体、ジャンルとも言える本たち。たとえば教授から授業の合間に最近あったことを聞くような、だけどその雑談に深い知性と洞察が詰まっているのが伝わってきて、なんだか聞いてるだけで嬉しくなるような。

 最近、研究者のエッセイがおもしろいんではないか……。
 と思うのはわたしだけでしょうか。いやもともと研究者って文章が上手い人が多いなぁと思うんですけど(湯川秀樹さんとか河合隼雄先生とか、みんなエッセイの文章が素敵!)、最近、「このエッセイおもしろいかったなぁ」と思うものを挙げてみると、どうも研究者の方の書いたものが多い。
 えっほんとに? 偶然じゃない? と思われるかもですが、いやいや、見てくださいこのラインナップを。どれもすごくいいエッセイだったんですよ。


1.『図書室』岸政彦(新潮社)

 表題は小説なんですが、個人的には一緒に所収されている、書き下ろしのエッセイたちがすごくよかったのでご紹介。自分の人生を切り取る、ひとつひとつの断片たちを文章にして書き起こす。たとえば若い頃のバイト現場、たとえば今はもうちがうかたちになってしまった大阪の姿、たとえば空き巣に入られた家のその風景……。エモーショナルすぎず、抑制が効いているんだけれども、それでいてやっぱりエモーショナルに最後は語りかけてくるバランスが心地いい。エッセイというジャンルが好きな人はぜひ読んでみてほしい一冊。

2.『孤独の意味も、女であることの味わいも』三浦瑠璃(新潮社)
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コメント

bun_soku 【選書】 https://t.co/0u1vWN1Jbq 5ヶ月前 replyretweetfavorite

shiraishimas 《うーむ、すごい。エッセイに見せかけて学術書で、だけどやっぱりエッセイ的で、新しい文体、ジャンルとも言える本。 》ーー『居るのはつらいよ』評でした。 5ヶ月前 replyretweetfavorite

ktowhata 錚々たる本の中、イルツラも紹介してもらっている、ありがたい限り。 5ヶ月前 replyretweetfavorite