なぜ親は就活生に「有名企業を受けないの」と言ってしまうのか?

デビュー30数年のSF作家がぶち当たった「AI時代の子どもの就活問題」。ようやく大学に入ったと思ったら、2年生から「インターンシップ」という名の就活が始まった! 人気ランキング企業へはどうやったら入れるのか? 理系のわが子のインターンシップはどう就職につながるのか? 子どもと一緒にあたふたしていた作家の就活参戦記。

わが子、大学2年生にして「就活スライム」となる。

「就活って、こんなに早く始まるものだったの?」

毎年、早春になりますと、メディア各社が足並みをそろえて一斉に就活の記事を流します。よーいドンの見出しこそないものの、スーツ姿の学生たちのうしろ姿の画像とともに、今年の就活は例年より早いだの遅いだの、売り手だの買い手だの、まるで桜の開花予想かマーケット速報のようです。

こうした報道に慣れきっていたわたしは、数年前、当時、大学2年だった子どもに、企業インターンシップのDMが次々と届いたときは面食らいました。本人に聞きましたところ、大学祭に大手就活サイトが出店していて、その豪華な景品につられて登録したとのこと。

子の就活がスタートした日でした。

就活を意識しててもしてなくても、就活サイトに名前、大学、卒業予定年度が登録された瞬間に就活ワールドに転送されてしまうのです。そこで、しばらく子のことをスライム(仮名)と呼ぶことにいたします。

大学2年次のインターンシップは、数ヵ月以上の長期にわたるものがほとんどでした。時間給として報酬が支払われるところもあります。インターンシップなのかアルバイトなのか、あいまいです。

当時、金融界はフィンティック(金融工学)やIT人材を、必死にかき集めてましたから、工学系のスライム(金融工学、情報工学とも無縁です……)のスライムにもDMを送ったと思われます。コンサルタント業界のインターン募集のDMは立派でした。金の箔押しのパンフレットに、企業の情報は企業名とサイトアドレスだけ。

「選ばれしあなたへ特別な招待を」といわんばかりの豪華なDMは、どこかうさん臭いものでしたが、お金の匂いがしました。自分には縁のない業界でしたから、スライムにはインターンシップに参加して話のネタを拾ってほしかったのですが、残念ながら当人は興味がなく、キラキラした世界のネタは聞けませんでした。

その後も続々とDMが届きまして、どうやら外資系金融コンサルタント業界は予想外に早く就活が始まることをおぼろに理解しました。

インターンシップ参加→「早期選考入り」が当たり前の時代?

ネットやメディアで、公開されている就活スケジュールは以下のようなものです。

大学3年の冬の「合同説明会」から始まり、3月の「企業の採用情報公開」、4月の人気企業ランキング、5月には「内定率〇割!」とヒートアップ、6月は大詰めの「選考・面接解禁」(注*2019年度の就活スケジュールです)で一段落。

6月終わりには「内定率9割!」等と高い数字が新聞の紙面を飾りまして、今年の就活は終わったかのような空気がただよいます。 その後、ややトーンダウンとした夏採用や秋採用のフォロー記事が出まして、10月の内定式へ。

そして、内定式後に、厚生労働省による調査(抽出された大学の大学生が対象)の内定率が発表されます。この厚労省調査の内定率は、それまでマスコミが煽ってた内定率より10ポイント以上は低い数字です。 あれれ、8割に届いてないんじゃ、と世間がざわついたころに、公務員試験の最終合格者発表で〆となります。

2022年卒の就活から、新ルールの「通年採用」が始まります。通年採用は、国内ではすでにファーストリテーリング、リクルート、楽天などが導入しております。通年採用にはコストがかかるため、もともとの知名度が高くて海外での人材採用を積極的に行っている大企業と、有給インターンという名目でアルバイト学生を囲い込むIT企業、優秀な学生に真っ先に声をかけられる就職情報企業の3業種が今のところ有利となっています。

人気ランキング上位企業にはどうやって入るの?

就活中の就活と呼ぶべき、『人気企業ランキング100』に採用されるような就活生は、一体どんな活動をしているのか、むくむくと興味がわいてきました。

発表!2020年卒の就活生が選ぶ人気企業とは?就職希望企業ランキング」(キャリタス就活2020)によれば、ランキング入りしている企業は、知名度、平均給与、福利厚生、どこをとっても抜群の高給好待遇です。 1位の三菱地所は、映画『シンゴジラ』で有名になった会社ですね。 こうしたピカピカの人気企業から、どうすれば内定をいただけるのでしょうか。

ツテをたどりまして、人気企業に就職した人たちの経験談を聞くことができました。 しかし、直接聞いてみますと、「社内にいるOB全員に自分を売りこんで、面接を突破」(OBがたくさんいるトップレベルの大学卒だから可能)とか、「西日本で1人選ばれた」(同期の星)、OBのいない大学から「10回の選考を経て選ばれました」(美男美女)など、一般人にはとても真似のできない話ばかりでした。

ウェブで探しましたところ、インターンシップで早期選考で内定を勝ち取った体験記が何例かでてきました。 インターンシップといえば、ウェブや企業サイトで募集がおこなわれており、冒頭で書いたとおり、就活サイトに登録すればDMがどんどん送られてきます。中にはインターンシップの名を借りた詐欺みたいなアルバイトもありますが、とにかく多種様々です。 残念ながら、三菱地所のインターンシップは、うちの理系スライムにはかすりもしませんでした。

早期選考で長期化する就活!インターンシップの重要性

しかし、スライムはランキング入りした別企業のインターンシップに参加することができました。 日本を代表する大企業の研究職インターンシップの募集ポスターを、大学の掲示板で見かけて、申し込んだのだそうです。今どきポスターということからわかるように、古い体質の大企業です。(名前は書けないのです)

数週間のインターンシップは研究所でおこなわれ、専門分野の学生院生だけでなく、研究所の一般事務職を希望する私立文系学部生や短大生も参加したそうです。 理系学生・院生らはチームごとに分かれて、現役の研究員らを交えたミーティングや、他チームとのGD(グループディスカッション)で競いあったのだとか。インターンシップが終わるころには、各自の知識の深さや洞察力、リーダーシップのあるなしが明確になって、将来、入社した場合の自分の配属先まで見透かせたそうです。

インターンシップ終了後、面談などの連絡がきまして、スライムが早期選考コースに乗ったことが分かりました。そして年の瀬前に学部に会社の役職者の訪問がありまして、インターンシップに参加した学生たちの早期選考が順調であることが口頭で知らされました。 インターンシップでまあまあの評価を受けた場合、早期選考に乗るという話は本当だったようです。

ただ、軽い気持ちで参加したうちのスライムは、垣間見た大企業の厳しさと、ほかの参加者の優秀さに自信を失ってしまいまして、その企業は諦めました。身の丈に合わなかったのです。

この会社に限らず、人気ランキング入りするような人気企業は、インターンシップが選考に大きく影響しており、選考の期間も長いようです。 人気企業から内定をもらった人のスケジュールを見ますと、遅くても大学3年の夏期インターンの募集がはじまる前からエントリーシート(ES)の内容を考えたり、仲間たちとGDの模擬をくり返して、インターンシップの準備をしているようです。

表向きの内々定は4年生の6月以降(注*2020年卒)ですが、準備まで含めると前年度の3年生の新学期には就活がスタートしている計算です。 人気企業のインターンシップは競争率が高く、応募しても必ずしも参加できるとはかぎりません。

その企業にとってインターンシップが単なる説明会なのか、それとも選考に不可欠となっているのか見極めましょう。長期化する就活で、途中で燃えつきることのないよう、自分のペースを心がけてください。

なぜ親は就活生に「有名企業を受けないの」と言ってしまうのか?

自分の就活に脱線します。わたしの生家は地方の商店でした。まわりは親代々の農家か自営業者で、ネクタイを締めているのは銀行員と公務員だけ。農家の子は農家を継ぎ、教師の子は教師になり、医者の子は医者になりました。

職業は世襲、と思ってきた人間に、キャリア形成等と言われてもポカンとするだけです。なにしろ周囲には、自力で仕事についた勤労者がほとんどいなかったのですから。 地方公務員は特にそうでした。市役所勤めの公務員は世襲の最たるもので、親族が勤めてないと採用は不可能というのが、暗黙の了解事項になってました。

そんなわけで地方の国立大学に進学したわたしは、4年になってもバイトをしながら、あちこちの自治体の教職採用試験(採用数の多い大都市圏なら可能性がありました)を受けつつ民間への就職活動もおこなってました。 そして、厳しい選考を突破できたのだから自分には適性があるのだろうと考えて、内定を得た会社に入社しました。

仕事は面白かったのですが、激務についていけなくなって退職しまして、転職活動中に小説が入選してデビュー。 小説家になりましたのは、就職したときとほぼ同じ理由です。高い倍率を突破できたのは自分に適性があるからだと考えたのです……。小説家としてキャリアをどう積むか考えたこともなく、当然、何度も行き詰まりました。

わたしと同時期に受賞した方は、「作家は1回始めたら、やめられない詰み仕事」とおっしゃって、デビューを断りました。その後、本業で活躍なさってます。どんなふうに生きたいか真剣に考えて、当時勤めていた会社でのキャリアを優先したのです。比べるキャリアが皆無だったわたしは、選択肢などありませんでした。

自分の無知さに恐れおののいてたころ、子の就活が迫ってまいりましたので、我ながら口うるさく介入しました。 チャンスがあれば就活の進み具合を質問して、子に嫌がられました。残念ながら、わたしは役にたつ情報を持っておらず、ダイヤモンド誌や東洋経済誌の就活記事を読んでは、いちいち知らせに行って、子を苛つかせました。

本人のほうが、先輩や同期の友人たちから生の情報をを得ていて、ずっと詳しかったのに。 残念な親が知っていることと言えば、せいぜい企業名、それもだれもが知ってるCMで有名な超大手企業程度ばかりです。どうなるかわかりますよね? つい言ってしまうのです。

「(知名度ばつぐんの)△△は受けないの?」【地雷】

……ほんとに就活レベル1の就活スライムはわたしのほうでありました。子はその後、しばらく口をきいてくれませんでした。わたしも反省しました。そのころ、AI関連の仕事がきたものですから、就活についても一から勉強しなおしました。(つづく)

イラスト担当:河田ゆうこ(かあちゃんときどきイラストレータ。振り返ること20年ほど前、当時3歳の娘を大阪市内の託児所に預け、関西の美術系大学で学び学芸員の資格取得したものの、美術館博物館の経験とか知識とか美術史とかさっぱりだめなひとです。描いたり観たり聴いたりは大好きです。最近はハンドクラフトにはまってます。)

◆次回は8月12日更新予定です。

5人の中学生が「未来の仕事体験ツアー」に参加するストーリーから、将来の働き方を楽しく学べる話題の本!

この連載について

AI時代、SF作家が「子どもの就活」にぶち当たったら。

図子慧

年々変わり続ける就活戦線で、子どもをバックアップする親は、実は最大の味方で、敵――かもしれません。余計な世話を焼いて、就活生の崩れそうなメンタルに巨大鉄球をぶちかましているかもしれません。デビュー30数年のSF作家が、就活の嵐が吹き荒...もっと読む

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コメント

CH0BBY インターンシップ->選考枠 って 禁止されてると思ってたんだけど、実際にそうなっているのはよく聞く。 3ヶ月前 replyretweetfavorite

zusshy 金融コンサルはインターンシップ必須らしいので、3年の夏のインターンシップの当落で決まってしまうそうなのです。つまりもう終わってる… (筆記が劇ムズなので大体そこで落ちるらしい) https://t.co/wTfmc4i9eV 3ヶ月前 replyretweetfavorite

rtogai 図子さんの今回のコラム、本筋と違うけど読み逃せないのは、デビュー時に同時受賞された方の「作家は一度始めたらやめられない、詰み仕事」というお言葉。 図子慧 @zusshy | 3ヶ月前 replyretweetfavorite

YUMING20202 新卒一括採用自体がもう時代に合わない。やめるべき。 3ヶ月前 replyretweetfavorite