今年は梅雨が長くてイライラしますが、それでも徐々に夏に向かって季節が動いていることは確かに実感されます。
とくにそれを痛感させるのが、朝玄関を開けると、扉の前に落ちている多種多様の虫たち。マンションの廊下の明かりにおびき寄せられてやってきた彼らは、夜の間中そこから脱出することができず、力尽きてひっくり返った状態で朝を迎えます。
あるいは彼らのような虫たちを狙い、自らの意思で人家に現れる虫たちもいます。とても身近な食物連鎖、自由研究の課題なんかにも最適でしょう。
日が昇った後、住民たちが、彼らを隣の庭先や近くの街路樹に逃がしているところもよく見かけるのですが……ちょっと待った!
それ、ちょっと食べてみませんか?
マンションに集う美味しい虫たちの話
夏、家の前に落ちてるやつと言えば……
いきなり何を言い出すんだこの変態は、これまでもヘンなもの食ってやがったが今度という今度は許さないぞ、という読者の皆様の強い軽蔑の視線を感じますが、実際のところ人家に集まる虫というのはもっとも手に入りやすい野食材のひとつです。
かつて「玄関開けたら2分でご飯」なんてCMがありましたが、昆虫類もある意味ではそうだといえます(調理時間除く)。
人家で虫というとどうしてもゴキブリ、ハエ、カといった衛生害虫のことを想像してしまいがちですが、そういうキワモノではない「普通の虫たち」もたくさん集まり、食用にするのはそういうものになります。
昆虫食、と聞くと「蜂の子」や「田んぼのイナゴ」などを想像される方が多いと思います。ちょっとコアな知識をお持ちの方なら、天竜川流域の「ざざむし」をご存知の方もいるかもしれません。
こういった昆虫たちはもちろん美味なのですが、どれも我々のような一般人には採取が難しいです。ざざむしは漁業権もあるしね。
しかし、人家に集まる虫たちは、最低限の知識さえあればこれらの虫と同様に利用でき、また同じく美味であるといっても過言ではありません。
具体的に紹介していきましょう。
茹でたてのジャガイモのような香りのセミ
みごとなクマゼミ
家に集まる虫で、もっとも捕獲しやすく、またもっとも調理しやすいのがセミ類。それでいて美味しいのですからおススメしないわけにはいきません。
当連載では以前「渋谷野食御膳」の回でメイン食材として登場しましたのでそちらをご参照いただければと思うのですが、虫の中では比較的いろいろな調理法が使えるのがセミの良いところ。とくに、茹でてから剥き身にすると美味しそうな身が取れるので、様々な料理に用いることができます。
まるでツナ
また一方で小さい種類はカリッと揚げてしまえば食べやすく、スナックやトッピングに用いることができます。
前回は虫取り網をもって街路樹を探して……とやりましたが、ご家庭での利用はもっと簡単。電灯に飛来し、疲弊してひっくり返っているもの(俗に「セミファイナル」と呼ばれる)を拾い集めればよいだけです。恐る恐る触ると暴れて鳴き喚くので、一気につかんですぐに袋に入れるようにしましょう。オスはうるさくて面倒だけど、可食部がメスより多いんだよね。。
セミ類はいずれも、一生の間植物の汁以外のものを口にしないため、身に毒をもつものがなく(アレルギーは別)臭みもなく初心者にも食べやすいです。調理前に糞出しをする必要がないのもハードルの低さにつながります。
サイズが大きければ大きいほど肉がたくさん採れ、味も良いのでおススメです。関東地方ではアブラゼミがメインになりますが、静岡以西では間違いなくクマゼミが一番のターゲット。剥き身は茹でたてのジャガイモのような香りがあり、とても美味しいです。ときどき浜松方面まで遠征するほど好きな食材のひとつ。捕獲後めちゃくちゃうるさいのが難点ですが……
枝豆スナックのような風味で、ビールによく合うコガネムシ
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