娘が「婚約指輪」を拒否したワケ

高校時代に付き合い始めたベンと10年の交際を経て結ばれましたアリソン。ところがアリソンは、ある理由から「婚約指輪はいらない」と当初から伝えていました。「伝統」より「2人にとって意義がある行為」を重視する2人の結婚式までの道のりをお伝えします。

「婚約指輪は給料●ヵ月分」はマーケティングの戦略だった

アメリカで有名人が婚約すると、彼らのインスタグラムに次の2つのような写真が載る。ひとつは(夕日などを背景に)男性が女性の前に片膝をついているロマンチックなプロポーズのシーン。もうひとつは女性の薬指に光るダイヤモンドの指輪だ。

ソーシャルメディアでこうした写真を見かけるたびに、私は若いアメリカ人男性に同情せずにいられない。近年の若者がソーシャルメディアで受ける「横並びプレッシャー」は、テレビ時代のわが世代よりも遥かに大きい。夕日を背景に片膝をついてプロポーズするシーンは出費ゼロでも再現できるが、ふつうの給与でジェイ・Zがビヨンセに贈った18カラットのダイヤモンドの指輪に匹敵するものを贈るのは不可能だ。貯金をはたいて20分の1の大きさのを買っても、井上陽水の1970年代のヒット作『感謝知らずの女』のように「もっと大きいのが欲しいわ♫(これじゃ、インスタグラムに恥ずかしくて載せられないじゃないの)」と婚約者から言われてしまいそうだ。

たいていの人は「婚約指輪の相場は月給2ヶ月分(3ヶ月分という説もある)」というルールをどこかで耳にしたことがあるだろう。この「常識」は、もとはといえば国際的に有名な「デビアス」というダイヤモンド会社のマーケティング戦略だった。デビアスは1930年代に「ダイヤモンドは永遠」という有名なスローガンを産み出し、不況のさなかにもかかわらず婚約指輪には「男性の月給1ヶ月分を費やす」というルールをアメリカ人に信じさせた。それを「月給2ヶ月分」に変えたのは、「永遠に続くものに月給2ヶ月分を費やすのは、小さな犠牲ではありませんか?」という1980年代のコマーシャルだった。

こういうマーケティングの効果か、「女の子は幼いころからウエディングドレスとダイヤモンドの婚約指輪を夢見るものだ」と思い込んでいる人も多いのではないだろうか。


手作りの結婚指輪

だが、娘のアリソンは、最初からボーイフレンドのベンに「婚約指輪はいらない」ときっぱり伝えていたのである。

その理由は、「婚約指輪は、もともとは男性が女性を所有物にすることの表示行為だった」というものだ。

イギリスでは19世紀まで女性は結婚したら夫の所有物とみなされ、自分で財産を所持する権利もなかった。そういう女性にとってあまりありがたくない過去の慣習を21世紀の今も続ける意味はない、と言う。

そのかわりにベンは「婚約記念」として2人がどちらも楽しめる日本の版画を購入した。芸術愛好家で、特に日本の浮世絵や版画が好きなベンが選んだのは、明治生まれの版画家、吉田遠志の『清麗の舞』という版画だった。

「婚約」の喜びを思い出としてずっと残せる、ある意味ダイヤモンドの指輪よりもっとロマンチックな贈り物だ。


吉田遠志の版画「清麗の舞」(1973年作)

「伝統」よりも「2人にとって意義がある行為」を重視する2人は、結婚指輪でもユニークな選択をした。

それは、「指輪を手作りする」というものだ。アリソンがベンの指輪を、ベンがアリソンの指輪を作る。


インストラクターの指導でプラチナの結婚指輪を手作り

互いへの思いを込めて作る指輪のほうが宝石店で高価な指輪を購入するよりもありがたみがある。

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まさかの自宅ウエディング

渡辺由佳里

娘のアリソンが長年のボーイフレンドのベンと婚約を決めた。と思ったら、「ウエディングは自宅でする」と言い出してパニックに陥ってしまった渡辺由佳里さん。自身の経験から結婚式にトラウマも抱える渡辺さんとその家族の1年にわたる「手作り結婚式」...もっと読む

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byyriica 【読んだ】 4ヶ月前 replyretweetfavorite

byyriica 【スキ】 4ヶ月前 replyretweetfavorite

n373n ノシ フェミニズムとは、「男女(現在ではLGBTQ+含)の誰もが固定のジェンダー定義の重圧と抑圧から逃れ、同じ権利を持ち、存在を尊重され、自由な選択を許される社会を目指す」こと https://t.co/ZYjDd2BwWz 4ヶ月前 replyretweetfavorite

career_kyoin 私は最近「フェミニスト」を自負していますが こちらに書いてある「真のフェミニスト」のようでありたいし それに共感する人々が増えて欲しいと切に願っています😊✨ https://t.co/7i32PvrcFh 4ヶ月前 replyretweetfavorite