「かつて産婦人科医は、お産でもうけ、次には中絶手術でもうけ、今は不妊治療でもうける……」
長年不妊治療に携わってきた産婦人科医は自嘲気味にこう話す。正確な統計はないが、ここ10~15年で産科や婦人科の医師の不妊領域へのくら替えが相次ぎ、同時に不妊治療専門のクリニックが激増したのは、多くの医療関係者が認めるところだ。
背景には、晩婚化によって不妊に悩む夫婦が増えたことによるニーズの拡大があるが、「特定不妊治療費助成制度」(下の図参照)が、不妊“ビジネス”を拡大させた要因だと指摘する向きも多い。
実は、日本は世界で最も生殖補助医療(夫婦自身の精子と卵子を使用)の件数が多く(「ICMART〈国際生殖補助医療監視委員会〉」のレポートによる)、“生殖医療大国”として知られる米国よりも多い。
生殖補助医療のニーズ拡大から生まれた医療職、胚培養士は、常に売り手市場。クリニック間で奪い合いとなっている
ちなみに欧州で最も多いフランスでも、実施件数は日本の半分以下。先進国の中で日本は、最も生殖補助医療が普及している国なのである。