交際相手の女性が“ブライダルチェック”と称し、妊娠しづらい原因がないかを検査していたことを知り、自分も一応調べておこうと思ったのだ。
その結果、動いている精子の割合、「精子運動率」が正常値よりかなり低かった。この数値では、女性の体内で精子が卵子までたどり着くことは極めて難しいという。
ちまたには不妊で悩む夫婦がいるらしいことは知っていたが、自分の周囲では聞いたことがない。
しかも、自分はまだ20代と若い。今回の検査だって、「あなたは大丈夫」というお墨付きをもらうためだったはず──。
「彼女に何て言おう……」
インターネットで「不妊治療」を検索してみると、治療費が随分と掛かることだけは分かる。
彼女はもちろん、友人、両親にも言えない。周囲から取り残されたような孤独感、そして「“子どもを持つという当たり前のことができない”という劣等感にさいなまれるようになった」と広瀬さんはうなだれた。
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