勉強が苦手な人が「社長」に向いている理由【第8回】

茂木健一郎さんと長谷川博一さんが「生きづらさ」の正体を考えるシリーズ。今回のキーワードは「自己受容」と個性の関係です。「私は私でいいんだ」という自分に対するゆるしの感覚。これを強めることがカウンセリングの目標だという長谷川さんに、茂木さんが脳科学の見地から反応します!
話題の新刊『生きる──どんなにひどい世界でも』を連載で全文公開。(火・木・土更新)

photo by 飯本貴子

カウンセリングの目標は 「自己受容」

茂木 先日、ツイッターで、イタリアでスリを目撃した日本人の画家が警察に行ってその捜査に協力したというエピソードを見かけました。

「私は画家だからスリの男の絵を描けるよ」とその日本人が言ったら、警察官が「画家なの? じゃあ俺の似顔絵描いてくれる?」と言ったので、描いてあげたと。そうしたら、その場で警察官が自分のお母さんに電話して、「母ちゃん、日本の画家が俺の似顔絵を描いてくれてるんだよ」と自慢し始めた。それを呆れてツイートしてたんですよ。日本人の感覚からしたら、「えっ、何それ!?」と思うけど、ある意味すごく人間的ですよね。

長谷川 うらやましい。そういうエピソードを聞くと、日本は世界的に見ても生きづらい国なんだと思ってしまいます。

 青少年教育研究センターという国立の機構が、学力も含めて国際比較調査をしているのですが、高校生に対するアンケートで、自己認知について調べたデータがあります。アメリカ、中国、韓国、日本の4カ国を比較したものを見ると、自己肯定に関する複数の質問に対して、日本の高校生の肯定感はどれも圧倒的に低い。厳密なスタンダードがあって、そこから外れた者に対する「許さないぞ」という排除の眼差しが強い、それが日本なんじゃないかな。

 カウンセリングの目標を一つ挙げるとすれば、「自己受容性」を高めることなんです。

茂木 自己受容、いいですねえ。

長谷川 勘違いしている人も多いのですが、何かを頑張ったり結果を出したりしたから自分はすごいというのは、パフォーマンスに対する「自己評価」。「自己受容」は、できてもできなくても無条件にそれでよしとすること。無条件性が大事なんです。例えば、自分はこれが苦手、すぐイライラしてしまう、ということがあっても、「私は私でいいんだ、苦手でいていいんだ」という自分に対するゆるしの感覚。このゆるしを強めていくのがカウンセリングの目標です。自己受容が進んでいくと生きづらさがやわらいでいくに違いない。これが、私の職業信念の根幹を成すものです。

茂木 面白いなあ。というのも、今おっしゃった「自己受容」と、脳科学で言うところの「多様性」の問題はほとんどイコールなんです。長谷川さんがおっしゃったのはカウンセリングの目的ですが、われわれにとっては「科学的な事実」です。多様性について述べるとき、長所と欠点は表裏一体です。脳のリソースは有限だから、それをどう使うかは人によって異なります。

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主婦と生活社
2019-07-19

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生きる──どんなにひどい世界でも

茂木健一郎 /長谷川博一

「生きづらさ」の正体は何なのか? 現代社会の病理はどこにある? 脳科学者と臨床心理学者が出会ったとき、いのちが動きはじめ、世界の見え方が変わります──。7月19日発売の書籍を全文公開。

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コメント

megamurara 「救いの網に掬われない人」ほど面白いかもしれない。 3ヶ月前 replyretweetfavorite

bumi_y 「『自己受容』は、できてもできなくても無条件にそれでよしとすること。無条件性が大事なんです。」→ 3ヶ月前 replyretweetfavorite