なぜ ありのままで生きられないのか【第7回】

脳科学者・茂木健一郎さんと心理カウンセラー・長谷川博一さんによる対話は第2章に突入。私たちを取り巻く「生きづらさ」であったり閉塞感、日本社会の病理の核心について語るうちに、茂木さんのSNSに端を発した、あの「炎上」体験の話題に……。
発売中の書籍『生きる──どんなにひどい世界でも』を連載で全文公開。(火・木・土更新)

photo by 飯本貴子

スタンダードな「世間」と自分の立ち位置

茂木 今の日本は、社会の空気として、「何かが病んでいる」と直感的に感じている人が多いと思うんです。長谷川さんから見ると、日本の病理の核心はなんだと思いますか?

長谷川 硬直性……でしょうね。「これが望ましい」という基準が固い。茂木さんのような自由さへの寛容度が低いことが、病理の核心の一つじゃないかと思います。

茂木 養老孟司(※12)さんが、「日本は真ん中に行かなければ許容してくれる」とおっしゃっていました。どうでもいい存在だと、「ああいうヤツもいていいんじゃない」と、イロモノのように許容してもらえる。でも、例えば新卒一括採用とか、社会のど真ん中では、「絶対にこの基準はずらしません!」という力が強い。それが日本なんだと。

長谷川 それが、生きづらさや、なんとも言えない閉塞感の理由でしょうね。上の世代から下の世代へ、あるいは権力から権力を持たない人へ、良かれと思って働きかけるというのは人間の宿命ですが、そういう流れがずっと続いてきた結果だと思います。

 大昔だったら、茂木さんのような人は、とても重宝されていた可能性がある。もちろん茂木さんは今も重宝されていますが、例えば学校も学問もなかった時代、縄文時代とかかな。その頃は家電も何もありませんから、いかに動くかが大事です。だから慎重に計画して行動する人より、忙しく動き回る人のほうが重宝されたはずです。でも、今、そういう子が学校に行くと、「ちゃんと座りなさい」と叱られてしまう。

茂木 僕は小学生のとき、いつもウロウロ歩き回るから、教室の一番後ろに座らされていましたよ。

長谷川 そうでしょうね。そして、こういう対談や講演などの場でも、「ちゃんとした服を着るべきだ」と言われたりする。

茂木 そうそう。講演のときもよくTシャツを着ていくんだけど、「あ、お着替えになるんですか?」って言われます。わからないんですよ、そういうの。普通に学校を出て、新卒一括採用で会社に入って定年まで勤め上げるっていう人は、いわゆる「まともな日本」の中にずっといて大丈夫なんでしょうか。僕だったらもう、そんなのは苦しくて無理だな。

長谷川 でも、茂木さんはスタンダードな道を歩まなくても、誇りを持って生きることができていますよね。

茂木 いや、全然そんなことない。ご存じかもしれませんが、僕の「日本のお笑いはオワコン」ツイート(※13)が炎上しまして、松本人志さんに『ワイドナショー』という番組に呼び出されて謝ったことがあります。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

脳と心で考える、生きづらさの正体

生きる──どんなにひどい世界でも

茂木 健一郎,長谷川 博一
主婦と生活社
2019-07-19

この連載について

初回を読む
生きる──どんなにひどい世界でも

茂木健一郎 /長谷川博一

「生きづらさ」の正体は何なのか? 現代社会の病理はどこにある? 脳科学者と臨床心理学者が出会ったとき、いのちが動きはじめ、世界の見え方が変わります──。7月19日発売の書籍を全文公開。

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

muni83403165 養老孟司さんの「全員が学級崩壊」の忘年会良いな……  4ヶ月前 replyretweetfavorite