蝶の飛翔を象ったポテトチップスの十六枚目が奥付のページ
後は寝るだけに準備して、ポテトチップスを食べながらベッドで本を読む。それがわたしの楽しみだ。
昨夜は四ページを読み終える前に眠ってしまったようだ。本は伏せた形で枕の横にある。本の間にポテトチップスが挟まっている。
カレンダー会社に入社して二年が経ち、希望して陰暦班に入った。毎日月齢のことを考えている。(今日は新月だから事始め)、(今日は満月だから完成する)という思考回路になった。
会議で上条さんが「来年は十三か月ね」と言う。
上条さんは陰暦班四半世紀のベテランで、かぐや姫と呼ばれている。
年が明け、三月の次が閏三月になった。
閏三月になった日から、空にポテトチップスが浮いていた。昼間は白っぽく、夜間は金色っぽく。
満月の夜には、からっと揚がった肉厚のポテトチップスが浮いていた。
帰宅すると、ベッドに伏せた本の間に肉厚の月が挟まっていた。
その月を食べると、鉱物の味がして舌が痺れた。
同じ面を見せつづけている月の模様を写しとっているポテトチップス
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