photo by 飯本貴子
「生きづらさ」は どこから来るのか?
長谷川 今回の対話の大きな目的は、「生きづらさ」について心と脳の両方の側面からアプローチすることです。まず核心にふれておきたいと思うのですが、「生きづらさ」の正体は何だと思いますか。
茂木 僕自身、「生きづらさ」を感じていた時期もありますし、「生きづらさ」を感じている人がいることも十分に理解していますが、それを差し引いても、脳がいろいろなことを柔軟に解釈する力や可能性は、もっと評価されていいと考えています。
つまり、「日本の現状が生きにくい」「社会と自分の関係が厄介だ」と考えるのは、自分の評価の結果であって、どちらかというと脳の一つの解釈の仕方だということです。
例えば、こんな有名な話があります。
「アフリカに二人の靴のセールスマンが視察に行った。その国では誰も靴を履いていなかった。一人は会社に〝あの国では誰も靴を履かないので靴は売れません〟と報告した。もう一人は〝あの国では誰も靴を履いていない。大きなチャンスです!〟と報告した」
このように同じ状況でも、世界は捉え方によって変えられるということです。今、僕自身は、なるべく明るく前向きに事態を見ようと思っています。
長谷川 なるほど。それでも現実問題として、「生きづらい」という感情を抱えている人はたくさんいますよね。
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