清田代表の「本当の性感帯」
【登場人物】
清田隆之
桃山商事・代表
1980年生まれの文筆業
森田雄飛
桃山商事・専務
同じく1980年生まれの会社員
ワッコ
桃山商事・係長
1987年生まれの会社員
清田 桃山商事の恋バナ連載、前回から引き続き「秘密と嘘」がテーマです。
森田 6月9日に発売された我々の新刊『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』の中に、清田の「本当は背中をさわさわ触られるのが好きなんだけど、ストレートにそれを言えない」って話が出てきたよね。あれは自分の性感帯を秘密にしていたっていう話でもある。
ワッコ わたしもセックスのときに自分の希望を要求できないんで、秘密にしたい気持ちはすごくわかります。
清田 「いきなり背中さわさわしてくれ」と正直に言ってしまうと、相手に「ここは風俗なんですか?」とか思われるかもしれないじゃない? だから毎回たまたま相手が背中を触った時に「なにそれ!? 気持ちいい!!」と大げさに驚いていたんだけど。
森田 で、次からは安心しておねだりすると。
清田 そうそう。「開発者はあなたです」みたいな感じを出して。
森田 「なにそれ!」という反応には、秘密を通り越して嘘が入ってるよね。
清田 確かに。ちょっと補足させてもらうと、自分的には「背中さわさわ」は性感とはちょっと違うと思っていて、頭皮を尖ったものでちょんちょんされたりすると気持ちいいとか、そういう感覚に近い。興奮ではなくリラックスって感じだし。
森田 なるほど。いわゆる性感帯ではないと。
清田 もしボッキに直結する部位を性感帯と言うなら、スポットは別にあって、それはタマの裏側なんですよ。
森田&ワッコ (笑)
森田 突然の告白だね(笑)。
清田 キンタマの裏って、背中のようなぞわぞわ感もありつつ、なおかつボッキにつながる性感もあるというすごいところなのよ。
ワッコ へ——。
清田 って、自分は一体何を力説してるんだろう……。ただ、ここは「蟻の門渡り」とも呼ばれていて、メンズの性感帯としてはわりかしメジャーなところだと思う。そこをこう、さわっとしていただけると最高の多幸感をいただけるというか……。
森田 それは背中さわさわよりもむしろ一般的な気がするよね。そこが最高だっていうことも、恋人には秘密にしていた?
清田 うーん。なんか、つい冗談みたいにしちゃうんだよね。これは前にニコ生の番組にきてくれたAV男優の一徹さんも言ってたんだけど、タマ裏の皮を伸ばして「モモンガ」ってやる、みたいな。そうやってギャグみたいにしてるけど、ほんとはそこの快楽指数が高いという。ただ、どうしても「気持ちいいから要求する」っていうガチな感じにはならない。
森田 冗談によって本当の気持ちを隠すことってあるよね。ただ、そういうときって意外と相手にはバレてる場合も多い気はするけれど。
秘密が生まれる瞬間
森田 次は常連投稿者の“いつもの先輩”のエピソードを紹介したいなと。先輩はバツイチなんだけど、今は再婚されて、3年生になる娘さんがいるんだよね。で、ある日家族でテレビを見ていたら、娘さんがいきなり「バツイチってなに?」って聞いてきたんだって。
清田 えっ!!
森田 なんかドラマでそういうセリフが出てきたみたいで。娘さんのその質問にはおくさんが「離婚した人だよ」って答えたんだけど、そこで先輩は「ここでまさか、俺がバツイチだって言ったりしないよな?」ってドキドキしたんだって。結局、おくさんはそこで話を止めたみたいだけどね。
ワッコ 娘さんは、お父さんに離婚経験があることを知らなかったんですね。まあ、それはわざわざ言わなくてもいいことか。
森田 ただ、そのときに先輩は「自分は娘に隠し事をしてしまった」と思ったんだって。
ワッコ 娘さんは、バツイチっていう言葉を知っちゃったんですもんね。
森田 それまではバツイチであることを秘密にしていたつもりもなかったのに、それ以来、「俺は今、秘密を抱えている」と思うようになってしまったみたい。いつか伝えなきゃいけないことなんだよなと、先輩は言っていた。
清田 たださ、娘さんはバツイチという言葉に興味を持ったのかもしれないけど、別に「お父さんがバツイチなのかどうか知りたい」と思ってるわけじゃないよね。
森田 まさかそうだとは思ってないだろうしねぇ。でも、先輩側の気持ちとしては秘密になっている。
清田 そこでもし「お父さんはバツイチじゃないよ」とか言っちゃったら、嘘になっていた。
森田 家族三人で楽しくテレビを見ている日常の裏で、先輩の気持ちがパソコンのバックグラウンドプログラムのように作動してる感じが興味深いよね。たぶん、先輩だけじゃなくておくさんもいろいろ考えてたと思うし。
秘密が深まる瞬間
ワッコ そういえば、こないだ友達から今のと似た話を聞いたんですよ。わたしとその友達はマッチングアプリにハマっていて、どうしたら男性から「いいね!」が来るのかをずっと研究してるんです。主に「プロフの写真はどういうのが一番いいのか」ってことなんですけど。ただ、その友達にはカレシがいるんですよ。
清田 そうなんだ。彼女はマッチングアプリで新しいカレシを探してるってこと?
ワッコ そうではなく、純粋な好奇心でやっていて、社会科見学みたいな感じに近いみたいです。ただ、もちろん彼にはマッチングアプリをやってることは秘密にしているんですけど。
森田 まあ、それは秘密にするよね。
ワッコ で、ある日その友達がカレシとふたりでいるときに、彼がふと彼女の写真を撮ったらしいんですね。そこで彼が「これ、マッチングアプリに登録したら『いいね!』がいっぱいきそうじゃない?」って言ったんですって。
森田 えええ!
ワッコ 友達は、「マッチングアプリやってることは言ってないはずなのに!」って焦った。
清田 それは確かにビビるね……。
ワッコ その場ではなんとなくごまかしたみたいなんですけど、さっきのバツイチの話と同じで、相手の発言によって秘密が一段深まった感じがしますよね。
森田 「バレてるのかな?」という恐怖もあるだろうし、言わないことの罪悪感みたいなのもあるでしょ?
ワッコ そうですよね。それまではマッチングアプリをやることの是非についてあまり考えてなかったのに、彼にそれを言われた瞬間に「わっ」てなって、罪悪感が押し寄せたらしい。
森田 心の動きが、「バツイチって何?」と言われたときの“いつもの先輩”に似てるよね。
清田 実際にはカレは知らなくて、何気なく言ったっていう可能性の方が高いよね。でも彼女の中では「もしかしたら全部知っていて、泳がされているのかな?」「だとしたら素直に言った方がいいのかな?」みたいな心理戦が始まっていそう。
ワッコ 彼女は「もうやめたほうがいいのかも」と言ってましたね。
お前の嘘を大事にしろ!
森田 これも『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』に出てきた話だけど、ワッコは、同棲中のカレシに浮気されて、その彼のことを“泳がしてる”時期があったよね。
ワッコ あ、そういえば。この連載でも紹介している、フルチン土下座の話ですね……。
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