光の闇営業、やってました 〜芸能界だけじゃない契約書の話

お笑い芸人が反社会的勢力の会合に参加し、金銭を授受したとされる闇営業問題。芸能界に入って来年で10年をむかえる牧村さんは、「光の闇営業」をやっていたのだそう。ご自身の経験をもとに、日本社会全体が契約書とどう向き合っていくかを考えていきます。


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「契約書もないのに契約解除?(笑)」

みたいなことを、いろんな意味で話題の芸人・宮迫博之さんがおっしゃっていた記事があったはずで、絶対にあったはずで、だから今回この闇営業についての記事を書くために探してこようと思ったんだけど、あれ? あれれ? 見つからない。

まあともあれ、2019年6月、テレビやネットニュースを賑わせまくったこの「闇営業」の話。そろそろおなかいっぱいって思われてるかもしんないけど、まだやる。

「最低ですね。アメト—クどうなるの?」だけで済ませたくない。

これを教訓に、芸能界以外もきっとよくしていけると思うからだ。

かく言うわたしは、芸能界に入って、来年1月で10周年。別に文春砲されない程度の知名度ではあるけど、出演料で食ってきた。芸名を屋号に、「タレント」で確定申告し、クレジットカードの審査を通してきた(JALカードは落ちた)。そして、食いつなぐために……

闇営業をやってきた。

そういう経験から、お話したいと思う。 「闇営業」から、芸能界だけじゃない、日本社会全体が契約書ってものとどう向き合うかってことを考えていけるんじゃないか、ってことを。

闇営業≠直営業

おそらく偉い人が意図的にやらせてることだと思うんだけど、この「闇営業」問題、以下ふたつのことが混同されている。

闇営業【やみ-えいぎょう】

(1)反社会勢力の前で芸を披露してお金をもらうこと。
(2)所属事務所を通さない直接取引でお金をもらうこと。

(1)と(2)は全然別のことであって、楽しんごさんがインスタで言ってた「闇営業なんかみんなやってるわ!」っていうのは (2)のことだと思う。この意味ならわたしもやってた。ただし、いわば「光の闇営業」だけど(あとで説明する)。

(2)を「闇営業」って呼ぶのは、最近のニュースでしか聞いたことがない。(2)はもともと「直営業(ちょくえいぎょう)」とか、業界によっては「直引き(じかびき)」って呼んできたことだ。この記事ではまず(1)「闇営業」(2)「直営業」を区別し、その上で話を進めたいと思う。

ではなぜ、「直営業」が発生するのか。答えは簡単だ。

食っていけないから、だ。

直営業が発生する背景

2年前に「奴隷契約はなぜ続く〜芸能界に入って7年で思うこと」という記事で書いたけど、かつての芸能界には、今よりもずっと体力があった。

舞台や映画を自分たちで作る制作所、つまり“プロダクション”がたくさんあった。芸能を志す人は、多くがプロダクションと専属契約を交わした。よその会社で作るものには出演しないことを約束する代わりに、専属契約先で生活を保証してもらい、訓練を受けて、仕事に励む。要するに、副業禁止の正社員みたいな働きかただ。

ところが……この“プロダクション”業態には無理が生じてしまった。

会社の経費で芸能人を育てると、どうなるか。人気スターはよそでも仕事したがるようになる。逆に売れなかった人は会社に養ってもらいたがる。スターが出て行き、売れなかった人が残る。で、経費がかさむ。じゃ、どうしよっか。スターを引き止めなきゃ。ということでスターに払う報酬を増やす。すると……あらら。もっと経費がかさむ。こりゃ大変。

なのでやがて、ほとんどの芸能事務所が“エージェンシー”業態に転換した。プロダクションが「芸能人を正社員のように抱える」ものだとするならば、エージェンシーは「芸能人をあくまで個人事業主として、雇わず、芸能以外の仕事だけ代行する」ものだ。「芸能以外の、営業・経理・広報・渉外・事務・法務、全部任せてね。その代わり、とってきた仕事の報酬は分けっこしようね。あと、トラブルからも守ってあげるから、事務所に隠して直営業しないでね」……っていうのが、エージェンシーの仕事。2019年現在、社名に「プロダクション」って入ってる芸能事務所も含めてだいたいがこのエージェンシー業態だと思う。

ここで(千原ジュニアさんみたいに)若くして売れる人は問題ない。
でも(わたしみたいに)売れなかった人はどうなるか。

食えなくなる。

わたしの場合は文字通り、バイト先の廃棄食品(と、5キロ980円の訳あり米)しか食えなくなる日々だった。ってことで、エージェンシーだけに営業を任せていられず、「自力で営業回って頑張ろう」と思うようになる。つまり、直営業を決意する。

ここで多くの人が闇落ちする。

直営業の落とし穴
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牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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コメント

darling00000000 契約書、自分の為にも相手の為にもしっかり読もう。サインし… https://t.co/jsTvO3JHhj 5ヶ月前 replyretweetfavorite

Tomokyo_ ほんっとそう思う。 5ヶ月前 replyretweetfavorite

notkitasima #スマートニュース ぐっど 5ヶ月前 replyretweetfavorite

k5t1s2_3 芸ノー人どころか本当に芸がある人まで潰されないようになってほしい日本 5ヶ月前 replyretweetfavorite