後編】人の数だけタモリがある

タモリの本当の “凄さ” って何だろう。謎めいたタモリの正体に鋭く切り込んだのが、初の新書『タモリ論』を上梓した小説家・樋口毅宏さん。インタビュー後編では、真の絶望大王であるさんまさんの話から、話はブラブラと逸れて「金玉論」へ……!?
cakesでは、『タモリ論』のまえがきも全文掲載。インタビューと併せてお楽しみください。

明石家さんまこそ、「絶望大王」である

 さんまさんに関するお話も聞きたいと思います。『タモリ論』の中に書かれているエピソードは、知らないことが多くて新鮮でした。

樋口 これ、ぜんぶ、テレビの中で言ってる話なんですけどね。実の弟さんを火事で亡くしたという悲しい経験をしたから、娘に「生きてるだけで丸儲け」という意味で “いまる” という名前をつけたとか。

 あとは、書かなかったけど、家では子供たちに「ボス」と呼ばせている話とか。これは、大竹しのぶさんと結婚したときに、大竹さんの連れ子が自分のことを「お父さん」とは呼びにくいだろうという配慮から、「ボス」と呼ばせていたんじゃないかと、大竹さんが自伝で語っています。もちろん、さんまさん本人は自分では言いませんけど、「わし、家ではボスって言わせてまんねん」とテレビで言ってましたよ。

 さんまさん自身は、あまり立ち入ったプライベートなことを公で語りませんよね。

樋口 あれだけおしゃべりな人が、私生活のことはあんまり語らない。本当はさんまさんこそ、いちばんつらい経験をしてきた「絶望大王」のはずなんです。でも、さんまさんは「自分は人を笑わせるために生まれてきた」って語ってるような人ですから。

 あれだけプライベートを見せない人というのは、高倉健さんや吉永小百合さんくらいじゃないでしょうか。その点でも、さんまさんは最後の “スターらしいスター” ですよ。

 そうした、さんまさんやたけしさんの個性と比べることによっても、タモリさんという人間を浮き彫りにしようとしたのがこの『タモリ論』です。ただ、タイトルに「タモリ」という名前を冠しておいて、どうしてここまで多くのページをたけし論、さんま論に割いたんですか?

樋口 この本を書き進めているうちに、「同時代の人々についても書かないと、タモリさんを語ることは無理だな」って気づいたんです。たとえば、夏目漱石論には、必ず森鴎外が出てくるじゃないですか。それから、今でこそ村上春樹論っていうのが単独で出ていますけど、10年くらい前までは、「W村上の時代」として村上龍についても一緒に語らないといけなかった。そうしないと、時代の流れが見えないんですよ。

 BIG3に関して言えば、去年の27時間テレビで3人が同じ画面を飾ったときは、「神々がそろった」と興奮しましたけどね(笑)。

 

「熱く語ろう、冷たい金玉」

 樋口さんは、『タモリ論』のまえがきでも、「海について知るものは賢者だが、海について語るものは馬鹿だ」という、漫画『人間交差点』(原作・矢島正雄/作画・弘兼憲史)の言葉になぞらえて、「笑いについて知るものは賢者だが、笑いについて語るものは馬鹿だ」と書かれています。

樋口 笑いは、芸術の中でももっとも難しいものなんです。それを語ることは、海について語ることと等しい。一方、いちばん簡単なのは、泣かせること。誰にだってできるんですよ。動物と子どもと不治の病と貧乏を出しとけばいいのだから。人を泣かせようとするのは、才能のない人間のする最低の手口です。

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天才・タモリの“底なし沼”—樋口毅宏インタビュー

樋口毅宏 /cakes編集部

タモリの本当の“凄さ”って何だろう。謎めいたタモリさんの正体に鋭く切り込んだのが、初の新書『タモリ論』を上梓した小説家・樋口毅宏さん。芸能界の重鎮・タモリにまつわるエピソードをふんだんに交えつつ、ビートたけし、明石家さんまという「お笑...もっと読む

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コメント

msmsm_msm 「人を泣かせようとするのは、才能のない人間の… https://t.co/6SxsWrLhhA 8ヶ月前 replyretweetfavorite

manaview 「セックスしてるときだって、リズミカルに金玉がペシッペシッて女性の肛門を叩いてるんですから」って金玉デカいってライブで言ってた園さん思い出した 約5年前 replyretweetfavorite