写真で話そう

そこに"存在していないこと"を撮った写真

以前「背景のみ」の写真を紹介しましたが、今回の写真はまた人が写っていません。では、そこには何が写っているのでしょうか?

ワタナベアニです。

以前、人物を撮影するためのストックとして背景を探しておく、というお話を書きましたが、それと似ていてちょっと違うのが今回の写真です。

俺は人物のポートレートを撮る仕事が多いのですが、そこにはいくつか必要なモノがあります。背景と人物。画面一杯に顔が映っているなどの特殊な例をのぞけば、ボケていようが真っ白であろうが、必ず背景は写ります。

前に書いたのは、その舞台設定となる魅力的な風景を見つけたら、記録しておこうという趣旨でした。今回の写真も、説明しなければ同じに見えるかもしれません。でも撮った目的は違うのです。映画に例えると、「主人公が去ったあと」もしくは「来る前」を感じさせる写真です。

実際には白バックでライティングを見るために撮ったモノも、そこに座ってもらおうと決めてからテストでシャッターを切った写真もあります。でもこうしてひとくくりにしたときはそんな事実はどうでもいい。これらは「主役の不在」を撮りました、というわけです。

禅問答っぽいですが、映画では最初から最後まで、すべてのカットに主人公が写っているわけではありません。いなくなってしまった人を表現するときは、その人がいつも座っていた椅子だけを写すこともあるでしょう。

写真は見えている真実だけを記録しているのではなく、それ以外の空間や時間をも写していることを知ると、ピースサインをした記念写真を撮ることから一歩を踏み出せるでしょう。

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ワタナベアニ

写真家・ワタナベアニさん。年中無休、四六時中、カメラのシャッターを切り続けています。この連載ではそんなワタナベアニさんのライフワークともいえる、ポートレート写真を掲載していきます。レンズのむこう側で写真家は何を思っているのか、その様子...もっと読む

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thinktink_jp "禅問答っぽいですが、映画では最初から最後まで、すべてのカットに主人公が写っているわけではありません。いなくなってしまった人を..." https://t.co/O4dbwjiu6k https://t.co/04AF4gXWZH #drip_app 7ヶ月前 replyretweetfavorite