何を学び直し、どうライフ・シフトにつなげるか。その方法は人それぞれで正解はない。
ただ、時代のトレンドを見渡すと、転身先として可能性が広がる分野がある。一つはインターネットやAI(人工知能)などデジタル関連の分野。優秀なエンジニアへのニーズはどの業界でも顕著だ。そして、「もう一つの大きな需要が地方で後継者不足に悩む中小企業だ」と、経済産業省の伊藤禎則・産業人材政策室長は指摘する。
「今後5年間で地方の中小企業を継いだ若手経営者が続々と誕生する。そこで高まるのが右腕人材のニーズ。都心で学び直しを経たミドル人材が活躍できる可能性は大きい。彼らは起業するのもいいが、地方にすでにある資源を生かすことで企業の成長につなげることができるだろう」(伊藤氏)
地方の中小企業にとって後継者不足は深刻だ。2025年には70歳以上の中小企業の経営者が、70歳未満の同経営者の2倍弱の約245万人に達するといわれ、うち半数ほどが後継者未定とされる。
「後継者が決まっている中小企業も、そのほとんどは親族か社内の人材。社外人材を登用する例は1%にすぎない。そこをどう伸ばすかが、中小企業の事業承継の大きな課題」と、中小企業庁事業環境部の菊川人吾氏は語る。
中小企業の事業承継には、若手人材による大胆な事業転換を指す「ベンチャー型事業承継」があるが、そうしたケースはまだ少数。一方で中小企業のオーナー経営者には、経営戦略を相談できる相手がいないとの悩みも尽きない。そこで期待が集まるのが、都心で働く大企業のミドル人材による経営サポート役の仕事だ。
都心の経営幹部人材を地方企業に紹介している日本人材機構の小城武彦社長は、「地方企業のオーナーは孤軍奮闘しており、相談できる参謀が少ない。だからこそ、幹部人材の潜在的なニーズは山ほどある」と話す。
都心で働くビジネスパーソンにとって、環境がまったく異なる地方の中小企業への転身へのハードルは高いだろう。仮に幹部クラスで迎えられ、収入が現職と同水準でも、大企業に慣れた人ほど転身を躊躇しがちである。
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