褒めることが心の負担になることもあります。必要なのは存在の肯定です
「HSCである娘は、『よくできたね』『すごいね』と褒めても、あまり喜びません。人の
心をよく読む子なので、こちらの気持ちを見透かしてしまうようです。褒める代わりにど うするのがいいですか?」
アーロン博士はこういう資質を「本質を見抜く」という表現をしています。言葉の本質をつかんで、本当にそう思って言っているのかどうかを直感的に見抜く。HSCにはそう いうところがあります。
この一文だけでは、この子がどういう思いを抱えているのかちょっとわかりませんが、 繊細なHSCの中には、褒められることがものすごいプレッシャーになる子もいます。
どういうことかと言うと、褒められるというのは、受けとめ方次第では「そうならないとダメだよ」と聞こえてしまうのです。
「いい子だね」と言われると、「いつも『いい子』って言われるようにしないといけない」 と思ってしまう。「すごいね」と言われると、「いつも『すごい』と言われるようでないと、 喜んでもらえないんだ」と思ってしまう。「優しいね」も「頭いいね」も「上手にできた ね」も何でもそう。HSCにはとくにこの傾向があります。相手が何を期待しているかを 察して、その期待に沿うようにしなくては、とがんばってしまうのです。
こうなると、子どもは褒められてもうれしいどころか、責任感とプレッシャーで緊張し てしまいます。普通の子ならそんなに心配しなくてもいいでしょうが、HSCは共感性が 高く人の気分に左右されやすいところがあるので、相手に合わせようとしてしまうのです。
とくに、子どもは親に好かれたい、愛されたいという気持ちがありますから、親が思っ ているであろうことを先回りして推しはかってしまいます。
こういうケースで親御さんに「お子さんは、こうしなくてはいけないという過剰な責任 感を負ってしまっているようですよ」という話をすると、たいていの場合、「そんなこと を強要したことはありません」と答えが返ってきます。知らずしらずのうちにプレッシ ャーをかけていることに気づかないのです。こういうパターンは、ソフトな支配のかたち、「やさしい虐待」に発展してしまうことがあります。
では、褒める代わりにどうしたらいいのでしょうか。
大事なのは、存在の肯定です。その子の存在そのものを、丸ごと受け入れ、認めてあげ るのです。
「それでいいんだよ。できてもできなくても、ママはいつも○○が好きだからね」
こういう気持ちを伝えてあげればいいのです。
それには、言葉をかけるよりスキンシップが何より効果的です。ハグやタッチをするの が一番伝わりやすいと思います。もちろん言葉も大切ですが、やさしく心地よく体の感覚 で伝わることは言葉よりもずっと強いのです。
「わかる」「伝わる」には、思考・感情・感覚の3つのわかり方、伝わり方があります。 思考というのは頭でわかる、つまり言葉を通じて頭で理解すること。感情とは、胸、すな わち気持ちでわかること。では感覚とは何かというと、身体つまり肌でわかることなので す。頭でわかるより、気持ちでわかるほうが身にしみます。それ以上に深く身にしみるの が肌感覚。だから、いろいろなものがわかるときに、身体(肌)にまで伝わることが一番身にしみて、深いのです。
ハグというのは、相手と胸と肌を接触させます。それだけ深く伝わりやすいのです。相 手と心を通い合わせたかったら、ハグするのが一番いい。背中に手を回してさすったり、 腕に力を入れてギュッと抱きしめてあげたりすると、より効果的です。ギューっと抱きし めることは、究極の存在肯定になるのです。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。