「なんだ、こんなものか」と思えるように仕向けていきましょう
「幼稚園のみんなに人気のあるテレビ番組も、うちは『怖い、消して』と言います。夜、寝ていたかと思ったら、突然悲鳴を上げて泣き出すこともあります。男の子なのに、あま りにも怖がりすぎ。こんなビビリで、この先、学校でうまくやっていけるのか心配です」 「遊園地に行っても、『怖い』の連発でどのアトラクションにも乗りたがりません。結局、 何にも乗らずに帰ってきました。公園の遊具すら怖がって乗れないことを知っていた私は 『やっぱりな』という感じでしたが、パパはその様子を初めて目の当たりにしてショック だったみたいです」
HSCやHSPの敏感さがよくわからない親御さんは、臆病、怖がりといった感情面に 目がいき、性格的なものではないかと捉えがちです。しかし、これは感覚の問題なのです。神経が鋭敏に反応してしまうことに一番困惑しているのは、当の本人であるということに思いを巡らせてあげてください。
HSCは、刺激を深く感じやすいため、おそらく過去に見たり聞いたり感じたりした怖い経験の記憶がそのまま残ってしまっているのです。それがそのときにふっとよみがえっ て、大きく反応したりしてしまうのではないかと思われます。
乳児の夜泣きもそうなのですが、敏感な子が突然泣き出すときというのは、その状況の 外的要因に反応しているばかりではなく、内側から何か怖さの感覚が湧いてくるというこ ともあります。敏感な人の中には、超感覚を感じやすい体質の人もいて、見えないものに 怯えて反応するようなこともあるらしいのです。それは約500人の子どもたちの感覚過 敏性のデータを取ったときにわかったことでした。
いろいろなことに怖がりな子には、「怖いことなんかないだろう、弱虫だな」とか「そ んなことじゃダメでしょ」と子どもを非難したり、否定したりするのでなく、怯えの状況 に理解を示して、安心させてあげることです。とくに、きつい言葉や大きな声での叱責は、 恐怖心をあおりたてていっそう怖がってしまいやすいので、小さな声で穏やかに話すこと が大切です。
不安があまりにも長く続くと、不安が不安を呼び、「過興奮性」をもつようになります。恐れが不安となって出てきます。不安は克服するより予防するほうがずっと簡単です。 「これは本当はこうなんだよ」と教えてあげたり、「今は無理なら次にしましょう」と不安 を受け止めたり、「あのときは楽しかったね、うまくいったね」とポジティブな記憶を思 い出させたりしてみてください。
これらの予防策で不安を切り替えるやり方を十分に身につけた段階で、一緒に不安な気 持ちを絵や色や数字や言葉や顔マークなどで表出していきます。
前述しました、母親の胎内での恐怖麻痺反射が残っているような子どもだと、触覚も過 敏で怖さを肌ざわりとして感じたり、身体の深層筋が弱いために姿勢を維持する筋肉が低 緊張だったり、前庭感覚や固定受容感覚が未熟でバランスがとりづらかったりして、不安 定な足場をとても怖がる「重力不安」という状態になっています。
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