肌の過敏さには、メンタルなものが影響しています。不安の根っこに気づいてあげよう
「HSCの小学生を持つ母です。小さいころから、肌に接触するものが気に入らないと着替えのたびに癇癪を起こして、本当にたいへんでした。でも、小3くらいからあまり文句 を言わなくなりました」
「私自身の子ども時代のことですが、お風呂が嫌いでした。お湯が熱くて、体を洗うタオ ルがヒリヒリと痛くて、洗いざらしたバスタオルのゴワゴワも痛くて、お風呂って修行だ なと思っていました」
これはいずれも「皮膚感覚」の敏感さです。皮膚感覚というのはけっこう大切です。
肌が過敏な人は、アトピーを起こしやすいという傾向もあります。アトピーがあると、 かゆいとか、何かが当たると痛いとか、いっそう過敏さがあらわれます。人から触れられたくない、見られたくないという気持ちも、敏感さを加速させます。
自閉スペクトラム症でも触覚過敏の人がいますが、よく「シャワーが痛い」とか「扇風 機の風が痛い」などと言ったりします。
皮膚は自分と人とを隔てる境界となる部分、いわばバリアの部分ですから、人に対して 不安や恐怖が強い子、対人関係が苦手な子には触覚過敏が多いのです。皮膚と神経という のは同じ外胚葉系なので、反応が似ているのです。
『子供の「脳」は肌にある』(光文社新書)という本で、桜美林大学教授の山口創はじめさんは こう書いています。
肌の境界感覚があまりに弱いと、人から影響を受けすぎて自分というものがなくな ってしまう。たとえば、自分を主張したり表現することができず、常に他人に合わせ ることでよい子を演じ続ける「過剰適応」の行動になる。
逆に肌の境界感覚があまりに強すぎると、自他を隔てすぎてしまって自閉的、ある いは傍若無人な行動傾向が強まる。
恐怖麻痺反射という原始反射があります。胎児の生き残りのための大事な機能ですが、それが、出生後になっても残存している人がいて、感覚や対人過敏性、姿勢保持の弱さな ど発達障がいの状態像に重なるところがあります。
身体的には背面が固まっていて呼吸や見え方に影響が出てきて、それが発達の土台を揺 るがしてしまうのです。
人間は胎生5週目の早い時期から、母体のストレスを感じて身体を固めて身を守る恐怖 麻痺反射が起こります。この反射では、痛みなどの物理的な刺激だけではなく、「雰囲 気」なども刺激になって身体が固まる反応を起こします。この反射が出生時までに統合さ れず、出生後も残存すると、触覚の原始系(防衛)から識別系(積極的なかかわり)への 発達が遅れ、危険を回避し防衛する肌の機能を最大化して対処します。
そのような状況から、外側の肌にエネルギーを集中させるために、前庭・固有感覚など の内部感覚を使うことが難しくなり、深層筋(インナーマッスル)が弱くなり、低筋緊張 になるのです。
前庭感覚、固有受容感覚、触覚(防衛的)、内臓感覚などの無意識的感覚が統合されて いない(過敏ないし鈍麻)と、身体のコントロール(姿勢の維持)や動かし方がつかめず、「私は誰か、どこにいるのか」という感覚(自分は自分だという感覚)が弱くなり、私と他との境界(区別)がはっきりと認識できなくなります。
私の経験的には、固有受容感覚(筋運動感覚)が育ってくると、触覚過敏が薄くなりま す。