若者の可能性を感じた「グローバル・ゼミ」
大阪で、非常に楽しい講演の機会をいただいた。河合塾主催、朝日新聞後援の「グローバル・ゼミ 2013」だ。日本の若者の大いなる可能性を感じた、貴重な機会であった。私は、このゼミを通じて、地方の子供たちのほうが、グローバル志向が強いのではないかと感じた。
開催地は、大阪。対象は、関西一円の中高一貫校の中3・高1生だ。河合塾は、このゼミを無償で提供している。東大の先、つまり海外の名門大学を目指す生徒が増え始め、彼らに対するプログラムの実験として、これを行っているのだろう。
主催側は、大々的に宣伝するわけではなく、中高一貫校に「こんな機会ありますよ」と知らせる。その後、学生が自発的に手を挙げるのを待つというスタイルをとっている。内容に関しても、講師とおおまかな講演タイトルだけが書いてあるのみ。夏休みの最初の日曜日に、わざわざ新大阪駅近くの河合塾まで出てくる時点で、参加者の意識はかなり高いと言えるのではないか。しかも、そのゼミは、あまり情報がない、何だか得体のしれないものである。
実際、参加者の自己紹介文が送られてきた時点で、「これは私なんかが海外に行けとわざわざ語る必要はない」と思うくらい、海外志向の強い生徒たちばかりであることが判明した。正直言うと、これを読んだ時に、けっこうなプレッシャーを受けた。参加者たちは、海外体験もあり、留学志望者も多い。彼らは、すでにかなり情報を集めているようなので、普通には入手できないような情報を求めていることだろう。ありきたりの話ではすぐに飽きられてしまう。
とはいえ、いくら優秀でも、所詮相手は15~16歳。情報を増やして、大人向けの内容にしてしまっても、彼らにとっていい機会になるかどうかはわからない。よって、今回の講演は、一般的には知られていない視点を盛り込み、数字や写真やグラフをたくさん使ったクイズ形式で、日本や海外の事情について、皆に考えさせるスタイルをとることにした。
関西の学生は積極的で、海外に対してハングリー
これがヒットした。今回来てくれた関西の中高生たちは、けっこう積極的で、東京と比べ、相手とあまり距離を取らない感じがした。私はこれまで、東京の学生たちを相手によく講演してきたが、それと比較して明らなことは、関西の学生たちのほうが、率直に意見や反論をぶつけてくるということだ。それがたとえ的外れであっても、自分で考えて意見を言えることは素晴らしいと感じた。彼らは、海外情勢についても、関心が高いのでよく調べている。
また、私が感じたのは、彼らが海外に対して非常にハングリーであることだ。やはり、地方の学生たちのほうが、自分たちが置かれた環境の将来的な厳しさを痛感しているのだろう。自分を守るためにも、チャンスをつかむためにも、外に出ることについて、真剣に考えている気がする。自国市場の将来性のなさに気付き、世界を目指す韓国の子供たちに似た環境とも言えるのではないだろうか?
それに比して、東京の学生たちは、日本における一人勝ち地域である東京の心地よさにマヒしてしまっているのではないか? 東京圏は、日本で唯一流入人口があり、高齢化の厳しさが感じられない地域だ。外国人も多い地域ため(実際は香港やシンガポールに比して、滞在している外国人の量も質も、圧倒的に劣っているのだが)、あまり危機感を感じることもなく、もう自分たちは世界に出なくても、世界を知ってしまっていると錯覚しているのではなかろうか?
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