酒としらたき【パリッコ】

「えっ、しらたき? そんなの鍋の脇役でしょ?」そう思っているあなた。どうやらそうじゃないらしいんです。今回はパリッコさんによる「しらたき」考。今夜あたりしらたきで飲んでみようかな。
なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、ぬるーく書いていくリレーエッセイです。過去の連載へはこちらから。

コンニャクは好きだった

突然ですが最近、急接近中なんです。「誰と?」って「しらたき」とですよ。

これまでの人生で、しらたき、つまり糸コンニャクのことを強く意識したことはありませんでした。常に「あぁ、そういうものもあるね」という姿勢。コンニャクは割と好きだったんです。おでんの具の中でも中の上くらいには入るし、公園の茶屋なんかで、味噌おでんをつまみにカップ酒なんかを飲むのも大好き。頻繁ではないけれども、晩酌のつまみに刺身コンニャクを買うこともありました。

じゃあなぜ、しらたきに興味を持ってこなかったか。自分でもわからないのですが、あの、なんかナヨナヨとした、どこか頼りないような存在感のせいかもしれません。「白滝」という、いくらなんでも大げさだろ! という名前のせいかもしれません。コンニャクの、無骨で、飾りっ気がなく、どこに行っても周囲に馴染みきれない存在感のほうに、自己を投影していたのかもしれません。

だがしかし、もしかしてしらたき、食材としてめちゃくちゃ優秀じゃね? そんな想いが自分の中にくすぶり始め、やがて気づかぬうちに大きく育って、とうとう急接近したのがつい最近というわけなんです。

けっこうあった、好きなしらたきメニュー

きっかけは数ヶ月前、とあるちょっと気の利いた酒場で出てきたお通しでした。確か「しらたきの辛子黄身醤油あえ」的なもの。それがすっごく粋な味だったんです。あれ? しらたきって調理次第でこんなちょっとした一品になるんだ、と驚いた記憶があります。

それからしばらくして、「新宿ゴールデン街」の中では珍しい正統派大衆酒場「ばるぼら屋」に行く機会がありました。そういえば、と、そこで思い出したんですよね。ばるぼら屋の名物といえば、煮込みと鉄板焼き。煮込みは牛スジたっぷりの特濃どろどろ系で、鉄板焼きはその名の通り、肉やら海鮮やらお好み焼きやら焼きそばやらをカウンター前の鉄板で焼くスタイル。ここに裏名物ともいえるメニューがあって、それが「コンニャクステーキ(白滝)」というもの。結んだしらたきに煮込みの汁をたっぷりと絡めつつ鉄板で焼き上げる、両者のいいとこ取りな一品。久しぶりに食べて思い出したんですが、煮込みの味が全体によ〜く染み込み、これが信じられないくらい美味しいんですよ!

決定打となったのは、つい先日行った、浅草ホッピー通りいちの老舗「正ちゃん」。僕はこの近くを通って、店に空席を見つけると吸いこまれずにはいられない病にかかっており、ここもまた、特濃牛スジ系の上にデーンと豆腐の乗った「牛煮込み」が名物。昼間っからこれと生ビールをガツガツぐびぐびとやっつけ、さっとお会計をして帰るという飲みかたが、なんとも浅草っぽくて好きなんです。

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スズキナオ /パリッコ

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