その円熟味
巨大仏が好きなので、番組告知映像やラテ欄に「大仏」の文字を見かけるともれなく録画予約しているのだが、6月15日放送『にじいろジーン』内のコーナー、ガレッジセールの「ニッポン開運☆福めぐり」では、磯山さやかが牛久大仏を訪ねていた。巨大仏好きにしてみれば、120メートルの牛久大仏が取り上げられるのは慣れたもの。奈良の大仏が手のひらに乗るサイズだとか、自由の女神の3倍だとか、大仏の胎内めぐりがあたかもアミューズメントパークのようだとか、展望スペースからスカイツリーが見えるだとか、初見の人々が見せる興奮を繰り返し確認してきた。率先して番組を見ておきながら、新しさが一切ないよね、などと講釈を垂れてきたのだ。
磯山さやかは茨城県出身であり、長らく「いばらき大使」だったこともあるほどなので、牛久大仏がただただ無難に紹介されるのを避けようと考えたはず。ガレッジセールの二人と手を合わせているときに、何を考えていたのかとふられると、長い間、グラビアの活動をしていないのにグラビアアイドルぶっていてすみません、と謝ったことを明かし、年を重ねてくると、撮影時に、立つや座るなどではない「途中の動作」が厳しくなってくると勢いよく述べた。グラビアアイドルが求められがちな中腰などのポージング、スタイルを良く見せるためのそれらがキツい、と端的に説明した。牛久大仏の魅力をくまなく紹介しつつ、時折、挟んでくる自虐の精度に酔いしれた。
「ずっとあの感じでいる」タフネス
井森美幸や島崎和歌子の後輩筋にあたる磯山だが、今、彼女らの存在に憧れ、ああいうふうになりたい、と言及するのが流行っている。本人たちが築き上げてきた壮大なキャリアを精査せず、その敷居を周囲が勝手に下げちゃっている感じがしなくもない。「ずっとあの感じでいる」のって、「ある時期に突出して目立つ」のとは比べ物にならないタフネスである。それなのに、ああゆうふうになりたい、というリスペクトがポップに集まるのは、当人に軽快感があるからこそ。
出立てのシンガーが「将来は安室奈美恵さんのように」と言えば、あちこちからあれこれ言われそうだが、バラエティに出始めた人が「将来は井森美幸さんのように」と言えば、そこには通気性が生まれる。だがその通気性は対象となった井森美幸が作ったもの。他者に介入させる余裕をひたすら生産し続けている状態にある。そういうものにこそ、リスペクトという言葉を向けるべきではないのか。
自分を落とすのって簡単そうだから
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