第4回】相手の力を引き出すために

様々なテレビ番組に出演中の、東進ハイスクール・東進ビジネススクール英語科講師の安河内哲也さん。予備校講師の仕事は、生徒たちのやる気を一年間維持することにあるといっても過言ではない。20年にわたり、講師として第一人者であり続ける著者がはじめて開陳する”ひとのモチベーションの上げ方”を初公開!

相手の意思を否定しない

 やる気をどんどん引き出してやるためには、その人が自分の意思で言ったことを否定してはダメです。

 若手社員が意欲を失ってしまう原因のひとつに、やることなすこと上司や先輩から否定されてしまうことがあります。
 何でもいいからアイディアを出してみろと言われて、出すと、
 「ああ、ダメダメ、それはない」
 「そんなの現実問題としてできるわけないでしょ」
 「前にもそれでぽしゃったんだよ」
 自分の出した意見が否定されてばかりいると嫌気が差し、もうアイディアを出したくなくなります。

 少々ピントはずれの案であっても、アイディアのひとつとして受け入れてやる。採用できるかどうかはその後の問題です。
 自分の意見や気持ちが受け入れてもらえると、思考回路が次に移っていけますが、頭ごなしに否定されると、否定された事実が精神的なしこりになって、かえってそこに囚われてしまいがちです。

 例えば、進路について、明らかに本人の適性と合っていないと思われることを言う子がいます。

 予備校にはキャラの立った個性的な先生方がたくさんおられるので、憧れて「自分も予備校の先生になりたい」と言う。
 しかし、しゃべる声も小さくもごもごしていて、内向的で、外に発していくエネルギーに力強さがないタイプが、予備校講師に向いているかというと、首をひねらざるをえません。もっとこの子ならではのものを活かせる場があるように思えます。

 けれど「それはやめなさい」と言うと、ムキになってもっと執着するようになってしまいます。
 こういう場合は、まずは当人の意思を否定しないで話を聞いてあげる。そのうえで、こんな仕事もあって、これも面白い、あれも面白いと、世の中には他の選択肢がたくさんあることを教えてやります。それも、その子自身にどうかをいうような話をするのではなく、雑談的に、一般論として「いまは面白い仕事がいろいろあるよね」という展開で話します。

 その子の意志に真っ向からぶつかっていくのではなくて、まずは受け入れてから、パラダイムを変えていく。「パラダイム」とは、ものの見方や考え方を規定している概念的枠組みのことです。

 ひとつの考え方に捉われて、そのなかでしか物事を考えられなくなっている状態から引き剥がしてやる。そのときすぐに理解できるわけではなくても、視野が狭くなっている状態を広げてやると、いままでとは違う視点に目を向けられるようになって、発想も変わってきます。考え方を「変えて」やるのではなく、自分で変わっていけるようにしてあげることです。

 Point→受け入れられたと思うことで、次の考えに進める

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人を「その気」にさせる技術

安河内哲也

予備校講師の仕事は、生徒たちのやる気を一年間維持することにあるといっても過言ではない。20年にわたり、講師として第一人者であり続ける著者がはじめて開陳する”ひとのモチベーションの上げ方”とは?

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コメント

gotoichi1003 先生の仕事も、いろいろと工夫があるのだすよね。奥は深い。とくに、二つ目のはあらゆることが勉強って意味だと思いました。→ 約5年前 replyretweetfavorite

kadokawaone21 cakes更新!テレビにご出演中の安河内先生。どうやって生徒にやる気を持たせるか、その秘訣を大公開!  約5年前 replyretweetfavorite