山小屋の最盛期は目の回る忙しさだ。
特に忙しい日は、早番なら早朝(深夜?)3時から夜9時まで仕事。もちろん途中で何度か休憩があるけど、休憩中に寝ようとしても、仕事の段取りが気になって眠れなかったりする。
また、食事もゆっくりとれない。昼食がすごく遅くなることもあれば、厨房の隅で急いでかきこむことも。最盛期は心身ともにヘトヘトだ。
だけど、嫌なことばかりでもなくて、忙しいこそのやりがいや楽しさもある。
最盛期が始まると「うわー、始まっちゃったよ」と思うけど、終わるとちょっと寂しかった。
最盛期は忙しすぎて心身ともにギリギリ
昔、朝4時から夜の9時までの間に、休憩が20分しか取れなかったことがある。
もちろん、毎日こんなブラックな働き方をしているわけではない。いつもは朝と午後に休憩があるのだけど、その日は忙しすぎて休憩を回せなかったのだ。
予約の時点で激混みすることはわかっていたので(予約数が収容人数に達してからは予約を断っていたが、断っても来る方や予約なしで来る方もたくさんいる)、あらかじめOBにその日限りバイトで入ってもらったり、準備はしていた。
当日も、予備の布団を廊下の隅に出しておいたり、食事の仕込を大量にしておいたり、準備は万端。
しかし、お客様は次から次へとやってくる。ランチ営業のオーダーがどんどん入り、注文を受けて会計をする人も、作る人も、息をつく暇がない。やっとランチ営業の時間が終わったと思えば、今度は宿泊受付に長蛇の列。その間、売店でドリンクやお土産を求める人も途切れない。そんなこんなで、ひとり20分しか休憩できないまま、夕食の準備に入った。
長時間労働によりだんだん頭がクラクラしてきて、夕食出し(お客様に夕食を提供すること)の途中、意識が飛んでいた。気絶したわけではなく、意識がないような状態のまま仕事をしていたのだ。
無事にその日を乗り越えたが、やっぱり記憶は曖昧。本当に忙しいと、何がなんだかわからなくなると知った。
ここまで忙しい日は稀だけど、最盛期は心身ともにギリギリだった。
私は体力がない上にメンタルも脆弱なので、弱るとものすごく愚痴っぽくなってしまう。昔はそういうとき、夫に弱音を吐いていた。しかし、夫婦で山小屋を任されてからは彼も精神的に余裕がなく、夫婦喧嘩が多くなった。
だから、他のスタッフに愚痴を聞いてもらう。もちろん、私も相手の愚痴は聞く。
けれど、仲がいい後輩ほど私に厳しい。このエッセイにもたびたび登場する後輩の芦田君は、私が愚痴を言うと不機嫌になり、「またですか」「もうその話やめましょ」と言う。
そうなると私も、自分を棚に上げて「聞いてくれてもいいじゃん! 器が小さいな!」と逆ギレしてしまう。
最盛期はそのくらい、精神的に余裕がなかった。
忙しさを改善する取り組みはしてるものの……
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。