すぐ消える悟り【パリッコ、スズキナオ】

連載20回突破記念。恒例のパリッコさん、スズキナオさんによる振り返り対談の後編をお送りします。前編はこちらから。
なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、ぬるーく書いていくリレーエッセイです。過去の連載へはこちらから。

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新種目「柔らかい床ゴロゴロ」

スズキナオ(以下ナオ) こうして対談をしているということは、前回の対談からまたエッセイが10本ぶん公開されたというわけですね。

パリッコ(以下パリ) はい。今期は、終電を逃す話とか、お酒の失敗談なんかが目立ちました。

ナオ 酒のしょうもない失敗って、こうして振り返るぐらいしか価値ないですよね。

パリ ないな〜。

ナオ 本当に毎回懲りてます。

パリ ね。もう、懲り疲れましたよ。

ナオ 懲りにこりごり。

パリ へへ。

ナオ たまに、終電逃して歩いて帰ったみたいな話をしたら、平然と「まあ、でも3時間でしょ? 歩けなくないよね」みたいに言う人がいる。

パリ 違うよー。違うんだよーもー。

ナオ 違うんです。

パリ スタスタスタ、じゃないんすよね。

ナオ そうそう。酔ったあとなんですよ! というか酔いながらなんですよね。

パリ ぜんぜん酔ってる。

ナオ オリンピックだってあれ、あなた、泥酔してやったら、記録どうなります!?

パリ 全員溺れてゴールたどり着けないよ?

ナオ はは。水泳なんだ。危ないなー。

パリ 酔ってやって危なくない競技あるかな?

ナオ 危なくない競技ないですね。高跳び、怖いなー。体操、怖いなー。

パリ 絶対ダメ! 酒酔い状態でのオリンピック禁止。

ナオ 国際的に禁止です。それか、新しい競技を考えるしかない。「ニコニコしながらハイタッチ」とか。

パリ なるほど。それも、転んでもけがをしない床で。

ナオ ははは。「柔らかい床ゴロゴロ」。うなりながら。

ナオ そういう状態で歩いて帰るわけですよ。だからめちゃくちゃ大変なんですよね。

パリ わかったか!

ナオ こっちの苦労が!

「星を、みつけたよ」

パリ つって、完全に自業自得なんですけどね。

ナオ 自業自得、略してジゴク。愚かすぎる。酒を飲まない人がちゃんと自分のリズムで明日の仕事にそなえて布団に入ってる時、こっちは見たこともない道を歩いてますから。

パリ 川を渡るとき、しばらくキラキラした水面見てから移動したりしません?

ナオ しますよ。

パリ 道端の「ご自由にお持ちください」の食器のダンボール、ゆっくり物色したり。帰れよ!

ナオ はは。荷物をより重くしちゃって。僕は和光市から池袋方面へ歩いて帰ることが多かったんですが、途中急に視界が開けて、星がすごい綺麗なんですよ。

パリ へー、いいな。

ナオ 暗いから星がたくさん見える。感動しましたねー。

パリ 多感になってるしね。

ナオ そうなんですよね。さっきまで一緒に飲んでいた、無事帰れた人々に「星が綺麗だわ」とかメールしましたもん。無視ですね、大抵。

パリ はは、あるある! 負け惜しみとかじゃなくて、「電車にはない良さがあったよ」って伝えたくなる。「こっちもこっちで楽しいよ」と。

ナオ そうそう。「星を、みつけたよ」。

パリ うるさいなー。

ナオ 迷惑だなー。

パリ 気をつけましょう。としか言えない。

ナオ ほんとです。

グラスは少なしボトルは多し

パリ ナオさんの「新しい酒のことわざ」の話おもしろかったです。勝手に新しいことわざが生まれる瞬間ってありますよね。

ナオ あります。ことわざって古いの多すぎでしょ。新しい時代にしかない感覚もあるだろうと。

パリ 「酒をこぼすは水の倍恥ずかしい」っていうのを考えてみました。

ナオ いいですね。「酒に酔って酒をこぼす」。

パリ あ、いい。深そうだけどそのままの意味。「酔うが勝ち」。

ナオ 深みがあります。負けでもあるような。「マグナムボトルの大後悔」。

パリ かっこいい! 「飲めると思ったんだけどな〜」。

ナオ はは。「やすい! ボトルにしよう!」ってサイゼでやって、翌日ほんと後悔します。

パリ 「グラスは少なしボトルは多し」。

ナオ いい!

パリ 「さればこそ、かち割りワインはちょうどよし」

ナオ ははは。おもろいっす。居酒屋の壁に貼ってありそう。

パリ なんなんだっていう。酔っぱらいの戯言。

ナオ 常連じじいが達筆で書いたやつね。

パリ そんな書ばっかり残したじじい。

ナオ 居酒屋にあるそういう色紙の展覧会やりたいっすね。居酒屋アートの世界展。

パリ 志が低くていいな〜。

ナオ 誰も来ない。

パリ まさかこれほどまでに来ないとは。

ナオ 主催者の我々も行かないくらいの。

パリ はは。どしようもない。飾ってあるサインで、絶対に読めない、誰が書いたかを横に書いてあったりもしないやつあるじゃないですか。

ナオ あるある。

パリ あれがいっぱい並んでる展覧会もやりたい。

ナオ 難読サイン展。

パリ 「これは誰かね〜?」「〇〇子って書いてある?」

ナオ 「いやーどうだろうねー! ま、いっか、どうでも」って。

「あ! わかったぞ今」みたいな感覚

ナオ パリッコさんの「酔描」っていうのも、なんかよかったです。詩情を感じるような。

パリ ありがとうございます。一度、飲んでる状況、リアルタイムで記録してやれと思って。

ナオ 酒スケッチというか。よく考えたらヤバいですね。意識の変容をそのまま描写するって。

パリ 公園で酒飲んでると、遠くで子供が遊んでる足元から砂埃が立ちのぼったりして、本当にただそれだけの光景なのに、なんか感動しちゃうときあるじゃないですか。

ナオ ありますね。勝手に泣きそうになる。

パリ ああいう感覚、形に残るものじゃないですよね、基本。

ナオ スピッツの『運命の人』の歌詞で「バスの揺れ方で人生の意味が解かった日曜日」ってあるでしょう。あれみたいに「あ! わかったぞ今」みたいな感覚になることもありますよね。

パリ めっちゃある!

ナオ 「これが生きてる意味なのかな」みたいな。すぐ消えるんだけど。

パリ すぐ消える悟り。その瞬間は本気で感動してるんだよな。バカだよなー。

ナオ けどずっと繰り返すでしょう。

パリ そのよくわからない感覚を記録してみたらおもしろいかもしれない気がしたというわけで、今後もこの連載でたまにやってみませんか?

ナオ そうしましょう!

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“よむ"お酒

パリッコ,スズキナオ
イースト・プレス
2019-11-17

この連載について

初回を読む
パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!

スズキナオ /パリッコ

なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、...もっと読む

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