飯尾和樹「爆笑までいかない感じがイイ」
ずん・飯尾和樹の名著に『飯尾和樹の暮しの手帖 現実逃避手帖』があり、そこには、飯尾のネタである、現実から逃避するフレーズ「あ~あ~ なにかしらワールドクラスのモノ、持ってたらなぁ~」「あ~あ~ 持ってる服が全部、来年流行らね~かなぁ~」などが並んでいる。自分からは何もせずに、誰かや時代や空気が何とかしてくれるのではないかと願ってみる。この手の願望って、大人になると、なかなか外に出しにくい。ギャグとはいえ、飯尾和樹の言葉はその可能性を大切に育ててくれる。
『おしゃれイズム』を観ていたら、ゲストの平井堅が、会いたい人として飯尾和樹を挙げ、スタジオに登場した飯尾のネタについて、「爆笑までいかない感じがイイ」と評していた。その表現に頷く。「10」が爆笑、「0」がダンマリだとすると、飯尾への反応は「6」や「7」くらいを浮遊している。大御所芸人でない限り、バラエティ番組で放たれたネタはその場を仕切る誰かに「今のは10!」「今のは0!」とジャッジされることが多い。飯尾のそれも「10」か「0」か、誰かに判断してもらうことで笑いが定まっていく。本当は、「ウケる」と「サムい」の間にグラデーションが欲しいのだが、せっかくの「6」「7」が、そのまま浮遊することが少ない。本人にとっても「6」「7」が「10」になるのは嬉しいことに違いないが、そんなに認められなくてもいいのに、とファン心理を呟いてしまう。
「6」「7」あたりで浮遊している平井堅
平井堅が飯尾和樹に放った「爆笑までいかない感じ」という表現って、そのまま平井堅を受け止めるのに使えるのではないか。彼の歌唱力やキャリアについて、まだまだ半端だとケチをつけるはずがない。ただし、このところ目立つ、平井堅の妙な衣装やPVについて、あれは一体「0」なのか「10」なのか、評価を下せずに宙ぶらりんにしているもどかしさがある。だが、別にいずれかに決める必要はないのだ。「爆笑までいかない感じ」、つまり、「6」「7」あたりで浮遊したままでいいのである。