告白とか別になくてもいい、のかもしれない

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。今回は、恋愛や結婚における「告白」について。告白ありきの恋愛をしてきた森さんも、最近は、なくてもいいのかなと思うようになったのだそう。そして、告白がなくなれば他にもなくなるものがあるのでは?と考えます。

告白という垣根がなくなりつつあるらしい。

告白とは、「好きです」「付き合ってください」「結婚してください」etc、秘め事や希望を特定の相手に打ち明けることだ。

昨今では皆さん、野性的な勘が冴えたり、時代の変革とともに誰もがオーラリーディングができるようになったり過去生が読めるようになったりして、もう言語なんか要らないよね、という風潮なのだろうか。

今や壁ドンも顎クイも古くさい?

私などは古い人間なので、やはり告白はあってしかるもの、と思っていた。だってわからないじゃないですか。「言わなくてもわかるだろ?」壁ドン、顎クイ、という世代のその前に私は色恋沙汰をやっていたのだ。いわば「言ってくれないとわからない」世代だ。今や、壁ドンも顎クイも古臭くて、皆さん、空気でやっちゃっているんでしょう? 「空気読めよ」じゃなくて「空気感じろよ」とか「空気発しろよ」(これも声にしないで視線や波動でやる)な世界観。

そんな私でも最近は、告白とか別になくてもいいのかな、と思うようになってきた。いえ、色恋沙汰云々ではなく、言語感覚の変容をそれこそ空気で感じたのだ。私は昭和生まれなので、恋人になる、結婚する、等々、やはり告白ありきの世代である。

インターネットのない時代、時間はゆっくりと重く過ぎていったものだ。電話はあったが家電がメイン。両親が自宅にいる時は公衆電話まで走り、限られたお金と時間で愛を伝えなければならない。「明日言えばいいか」なんて躊躇している間にお金と時間が切れてしまうのだから。

故に「俺達(私達)、付き合ってるんだよね?」と素早く確認せねばならない。それも10円玉ではなく100円玉を投入後だ。もしくは度数が余裕たっぷりのテレフォンカード(死アイテム)を差し込んでからである。うかうかしていると、「俺達(私達)、付き合って……、ガチャプー(電話が切れる音)」と無残にもシャットダウン(という言葉もなかった時代だけど)される恐れがある。空気を感じたり発したりするどころではなく、言葉やそれに付随する行動がないと何も始まらなかったのだ。

レッテルがあれば自信が持てた

私自身、かつては「好きです」「付き合ってください」「結婚してください」と言われてきたし、言ってきた。結婚の場合は「結婚しよう」だったかもしれないが、とにかく旦那さんからの告白があった。なんていうか、連絡はすぐに取れないし、待ち合わせ場所ですれ違う可能性だってあるし、言葉で存在価値を示しておかないと不安だったのだ。昭和だろうが大正だろうが、特に言葉を要しない人達もいたに違いないが、私の周囲では少なくとも、告白といった確認事項はあったように思う。

私はあなたの「恋人」「彼女」「妻」というレッテルがあれば自信が持てた。頻繁に会えなくても、滅多に電話できなくても、言葉というレッテルで自分を落ち着かせていた。彼ないし夫が外で浮気をしていようとも、私はあなたの「恋人」で「彼女」で「妻」なのだから。彼は私に一世一代の決心をして告白したのだから(と思いたいのだから)。

ロマンといえばロマンだけど、つまりは安心材料だったわけだ。だって当時の時間はゆっくりと重く過ぎていったのだ。今日告白できなかったら、明日またチャレンジしなければならない。SNSがないから、今日や明日の彼や彼女のスケジュールは見えないし予想できない。誰か友人や知人に聞いて回ればいいのだが、電話しても出るとは限らないし、おしえてくれるかどうかも不明だ。

告白がなければ、「あなたと私は仲がいいし、セックスもしてるけど、どういう関係なのかな」といつまでも悶々とする。繰り返すがSNSがないから、彼や彼女の交友関係が今ひとつ謎だし、把握するまで時間がかかる。まあ、感覚的に本命なのかセフレなのかはわかるものだが。

いろいろなサイクルが速くなっている
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アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

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tuna0729 引用元はこれですが。https://t.co/LoEGuRNW6N 6ヶ月前 replyretweetfavorite