かぼちゃの南蛮煮】料理人が教える「お家で作れる本格和食」

おいしい煮ものの条件とは? おいしくて、じんわりやさしい味になるための、煮ものの「勘どころ」を、その道40年以上の和食料理人・野崎洋光が紹介。本当のおいしさとは、素材のおいしさをピークにするためには、など煮ものを上手に作れるようになる方法を教えます。5月16日発売『おいしいごはんの勘どころ』(学研プラス)より特別連載。

"素材のピークを見極めて煮る"のがおいしい煮ものの第一歩

 おいしいおでんや煮もののほめ言葉として「だしの味がよくしみている」という表現をしますね。僕は疑問に思っていて、味つけのことを説明するときに僕は「おでんの大根は、大根の味をのこすように」といいます。素材の味が感じられないくらいに、だしのうまみが強かったり、調味料の味が濃いものであったりしては、せっかくの料理が残念なものになってしまうと思っているからです。僕が作るふろふき大根は、昆布1枚とわずかな調味料を入れて煮ただけ。素材のもつ味を、ダイレクトに感じられるようにしています。

 「素材の味がする」ように煮るには味つけだけでなく、煮る時間にも意識を向けてください。煮すぎるとぐずぐずになって何を食べているのかわからない、本来の食感も失われてしまいますから。さといもの煮物はほっくり、かぶの煮ものはさっくり食べたいですよね。そのためには、素材のピークのおいしさを、できあがりでもってくるようにするだけ。言葉で説明するのは簡単ですが、そのタイミングを見極めるのは最初は難しいかもしれません。煮すぎないために、途中で取り出すという方法もありますが、やはりこういうものは、繰り返し作るうちにタイミングやコツがつかめるようになってくるでしょう。

 そうそう、家庭料理は簡単に、とよく言う僕ですが、ひと手間である「材料の霜降り」は別。これは是非やってほしい手間です。霜降りをするだけで、がらりと味が変わります。試してみてください。

 では、今回は「野菜の煮もの」を作るときの勘どころを紹介します。

下ごしらえ

□材料の霜降りをする

きのこ類はさっと、根菜などの火が通りにくいものは熱湯に少し長めに入れて引き上げます。アク、雑未が取り除かれ、料理の仕上がりが、すっきりと澄んだ味になります。肉を入れる場合も、最初に霜降りをしてから合わせると仕上がりの味が変わってきます。

煮る

□下ゆでは米のとぎ汁で

下ゆでする必要のある材料は、米のとぎ汁でゆでると、仕上がりがぐっとレベルがあがります。米のでんぷん質は、味をじゃますることなく素材のアクを付着させ、白くゆであげる作用があります。一番いいのは米ぬかを使うこと。とぎ汁がない場合は、米を利用してみてください。

□水+調味料で煮る

調味料を加える順番は「さしすせそ」といいますが、煮ものでは、はじめから調味料を合わせて入れてしまってかまいません。ちなみに「さしすせそ」の法則どおりにするときは、味がしみ込みにくい素材を使う煮ものや、調味料の風味をいかしたいときです。

□湯気が立つ程度の火加減で煮る

強火でグラグラと煮ると、煮汁の中の食材が踊ってしまい煮くずれしやすいので、湯気が立つくらいで煮るのがコツです。鍋の状態を見ながら煮ましょう。

□落しぶたをする

煮ものは少ない煮汁をかえして素材に火を入れていくので、その少ない煮汁を対流させるための落し蓋は必需品。木の落しぶたを使う場合、水で湿らせて使いましょう。よく、アルミホイルで代用できるといわれていますが、実は落しぶたの代用はアルミホイルでは不完全。なぜなら、落しぶたは煮汁の対流を起こすために使うもので、アルミホイルでは軽くて浮き上がってしまうためです。アルミホイルではなく、重みのある皿などをかぶせて浮き上がらないようにしましょう。

仕上げ

□落しぶたをとり、煮汁を煮つめる

強火で一気に煮汁を煮つめて、味を凝縮させていきます。
では、ここからは具体的なレシピと一緒に「勘どころ」を確認します。

【かぼちゃの南蛮煮】本当に必要なことだけが知れるレシピ

唐茄子とはかぼちゃのことで、江戸時代の庶民はこう呼んでいたそうです。メキシコ原産のものがポルトガル人によって江戸時代に渡来したという歴史があるかぼちゃを、ピリッと辛い豆板醤で煮て、かおちゃの甘さを引き立たせます。ぽくぽくの粉ふきいも状態をめざして煮るため、入れる酒は水と同量。酒のうまみをいかすことも目的ですが、アルコールの多い酒は水分の蒸発も早いのでたくさん使って煮ます。

材料/かぼちゃ…250g、豚ばら薄切り肉…80g、A(水・酒…各60ml、みりん…大さじ2、しょうゆ…大さじ1、豆板醤・ごま油…各小さじ1/2)、長ねぎ(みじんぎり)…1/2本

◆作り方
1. かぼちゃはわたと種を除き、ひと口大に切って、ところどころ皮をむく。豚肉はひと口大に切る。

2. 熱湯にかぼちゃを入れて1~2分ほど浸し、ざるにあげる。残った湯を豚肉をほぐして入れ、表面が白くなったらざるにあげる。

(勘どころ1/材料の霜降りをする)

3. 鍋にかぼちゃ、Aを入れて落しぶたをし、中火にかける。

(勘どころ2/水+調味料で煮る)

(勘どころ3/落しぶたをする)

4. かぼちゃに半分ほど火が通ったら、豚肉をのせ、落しぶたをする。煮汁が煮つまってきたら落しぶたを取って鍋をまわし、汁をからめるようにして仕上げ、長ねぎをふる。

(勘どころ4/落しぶたを取り、煮汁を煮つめる)

◆【肉みそ】の作り方
材料/鶏ひき肉…50g、A(赤みそ…100g、砂糖…大さじ4、みりん・ごま油…各大さじ1)

◆作り方
1. ひき肉を目の細かいざるに入れ、箸でほぐしながら熱湯にくぐらせ、色が白く変わったらざるを引き上げ、水けをしっかりきる。鍋にAを入れ、中火にかけて木べらで練る。途中、ひき肉を加えて混ぜ、火を通す。

【ふろふき大根】本当に必要なことだけが知れるレシピ

大根の甘さとほろ苦さを味わうシンプルな料理です。大根の味をいかすためにだしは使わず、水に昆布を加えて煮ていきます。ゆでたての大根は、ほんとに甘くておいしいものです。残念なことにその淡い風味は時間とともに消えていってしまうので、作りおきをする料理屋ではそれを補うためにだしを濃くし、煮含める必要性がでてくるわけです。家庭では、できたてを食べられるので、その必要はありません。

材料/大根…1本、米のとぎ汁…適量、A(水…1ℓ、塩・酒…各小さじ1、薄口しょうゆ…小さじ1/2)、昆布…10cm

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この連載について

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おいしいごはんの勘どころ【和食レシピ】

野崎洋光

料理にはそれぞれ「勘どころ」となるポイントがある。 レシピどおりに作らなくても、その「勘どころ」さえおさえていれば素材がいきておいしくなるし、 失敗もぐっと少なくなる。レシピに縛られないから、料理が自分のものになって自由...もっと読む

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