時計の針を戻した2009年のこと、本田俊介・JAL国内路線事業本部長は電車内のある異変に気付いた。新聞や雑誌を読む人は減り、ほとんどの乗客がスマートフォン操作に没頭していたのだ。「地上でできることは、いずれ空の上でも求められるようになる。飛行機内でも、会社や自宅のようにインターネットを使えないものか──」。
ところが、総務省に相談に出向くと、「電波法ってご存じですか」とつれない返事がきた。当時、電波法や航空法では、電波を発する電子機器の機内使用は禁止で、議論の余地すらなかった。
しかし、ヒントはあった。そのころ、米国でプライベートジェットに音声通話を提供する事業者が、飛行機へのネット導入サービスを始めたのだ。ただし、北米200カ所に設置された地上電波塔から、飛行機の胴体に設置したアンテナに直接電波を飛ばす方式は、海上飛行が多い日本では通用しない。
そこで編み出されたのが、人工衛星を活用する方法だ。地上から衛星を経由して飛行機に電波を飛ばす方式で、技術的な壁を破ったのだ。
その後、航空法の規制緩和で、機内モードならば電子機器利用も可能に。先行して有料で始め、ついに16年6月、JALは「無料Wi-Fi宣言」を行い、人気タレントを起用して大々的にPR。無料Wi-FiはJALの新たな代名詞になった。
「無料Wi-Fiは新たな競争力になった」と語る、本田俊介・JAL国内路線事業本部長
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