育児一年、こうしておれは

父親になるってどういうこと? ググっても答えが出ないから書いてみた。ライブやフェスをレポートするのが趣味のネットユーザー、本人さん(@biftech)による子育て実況連載、第27回。あんなに小さかった赤子が1歳の誕生日を迎えました。さて突然ですが今回でこの連載は最終回になります。大切なお知らせがありますので、最後までじっくりどうぞ。

ゴールデンウィークの終わり、文学フリマでベビーカーを引いていたら、生まれて間もない頃の子供に会った人と偶然再会して「大きくなったねえ!」と言われた。ええ僕もそう思います。改めて眺めてみれば、この人ったらずいぶん大きくなりましたもん。ずっと赤ちゃん呼ばわりしてきたが、脆弱すぎたはずの体はもはや「男児」と呼んだほうがよいサイズ感になり、今日から走り出してもおかしくはない。2019年5月、我が家の男の子は誕生から1年を迎える。

誕生日当日は、青空の下で保育園の運動会が行われた。入園式と同じく生まれて初めて鑑賞者の立場!という想いに包まれたものの、まだ自走できないので子供が参加するのは開会式と親子競技のみ。おれは体重9kgに到達する彼を抱きながらの障害物競走で休眠状態の筋肉を悶えさせ、妻と子が見守る中グラウンドに立った保護者競技では「まずは保育士の動きに合わせてダンスを!」という呼びかけに「まじかー」とほかのパパさんと苦笑い。その後飲み干した生ビールは、過去最高に水みたいだった。

スポーツ鑑賞、親子競技、母子の見守る中でのダンス、パパ友と談笑。拝啓、キーボードをカタカタやるかスマホをスッススッスやるしか能のなかった昨年までのおれ。お前の子が連れてってくれる世界は、驚くほどに真っ当で、新鮮だ。背伸びしてウルフギャング・ステーキを一緒に食べたり目を細め合ったりした妻も運動会ルックで日除けテントから「がんばれー!」と声を張ってくれるし。1年後に普通の世界へ飛び込んだ僕を「コスプレみたいじゃん」とすら思わなく日が来るからな。覚悟しててほしい。

きちんと育めるだろうか、親心は芽生えるのか、授かり婚の妻とうまくやり続けられるかしら、果たして家族の形成は—毎度「すごい変化だ」と客観的タイムを挟みながらの1年(妻との出会いを含めると2年あまりか)だった。教室の隅で居心地悪くしているだけの季節なんて遥か遠くに行ってしまい、いまの私は妻子の無事のために体は自然と第三者を頼るし、また人前で踊ったり声を出したりするのだってはばからない。

大学卒業の頃に何度も自分を重ねた名作『宮本から君へ』は、煩悶とする社会人生活+αを経てパートナーの出産で完結した。自分が読みたがっていたそこから先の物語と変化は、もしかしたら案外こんな感じなのかもしれない。それを20代当時の自分が読みたいかどうかは別として、人生どう転がるかわからなさ、だだっ広さは、疾走感や激しさとはまた別の勢いに満ちている。育児はする側もずいぶん育つもんだ。

祝福のアニバーサリーを通りすぎ、1歳児が最初に挑戦したのはカレーライス。保育園のお迎え時に先生から「今日はですねー」と聞かされ、帰り道に「そっか、カレーすら生まれて初めての味になる……!」と私は何十回目かの感慨を噛んだ。

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こうしておれは父になる(のか)

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「今にこの子は「パパ」としゃべるだろう。そのとき自分は、何としてきみを抱きしめたらよいか、再び考えてみよう」――ライブやフェスをレポートするのが趣味のネットユーザー、本人さん(@biftech)がはじめての子育てを実況! 父親目線で見...もっと読む

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コメント

biftech 最終回、明日いっぱいで無料公開終了です。本当にありがとうございました! 6ヶ月前 replyretweetfavorite

chiffon_06 “1年後に普通の世界へ飛び込んだ僕を「コスプレみたいじゃん」とすら思わなく日が来るからな。覚悟し… https://t.co/ODGtO7SHNR 6ヶ月前 replyretweetfavorite

mai417 共感しかない 6ヶ月前 replyretweetfavorite

katakana27 本人さんの言葉ってなんかスゥーって入ってきて噛み締めてしまう 6ヶ月前 replyretweetfavorite