3章 アヴェイロ
住んでみるなら
作家の檀一雄は、かつてリスボン近郊のサンタ・クルスという静かな漁村に1年半暮らした。歌手のマドンナは今、リスボンと、近郊の町シントラの二拠点で暮らしているらしい。
私ならどこを選ぶだろう。たとえばポルトから電車で南に1時間の海沿いの小さな町、アヴェイロなんてどうだろう。シーフード天国で、大好物のペルセーベシュ(通称亀の手。フジツボの一種でうま味が濃く、日本でもポルトガルでも茹でて食べる)も市場で安く見かけるし、町がアズレージョに彩られているのもいい。家も店も教会も、あらゆる建物がカラフルなタイルに覆われて、町には独特の雰囲気がある。アズレージョの種類も、鮮やかな青から黄、緑、多色使いのもの、立体的な凹凸のあるものやモダンなデザインなど、あれこれあって見ていて飽きない。この一帯は陶磁器に適した粘土質の土壌だから、昔から陶磁器工房やタイル工場が多く、アズレージョも個性的なのだ。