出雲の神宝をめぐる兄弟の争いと幼子(おさなご)の言葉
六十年七月十四日、天皇は臣下たちに言いました。
「タケヒナテリ(武日照命)が天から持ってきた神宝が出雲大神(いずものおおかみ)の宮※1に所蔵されている。これを見たいものだ」
そこで矢田部※2の遠祖・タケモロスミ(武諸隅)を派遣して、献上するように命じました。
このとき、出雲臣(いずものおみ)※3の遠祖・イズモノフルネ(出雲振根)が神宝を管理していましたが、ちょうど筑紫国(つくしのくに)に出かけていて留守でした。そこで、イズモノフルネの次の弟のイイイリネ(飯入根)が代わって皇命を受け入れ、神宝を下の弟のウマシカラヒサ(甘美韓日狭)とその子のウカズクヌ(鸕濡渟)に持たせて献上しました。
そうしているうちに、イズモノフルネが筑紫から帰ってきて神宝を朝廷に献上したと聞き、弟のイイイリネを責めて言いました。
「あと数日待つべきだったのに。何を恐れてたやすく神宝を渡してしまったのだ」
年月が経っても、兄はなお恨みと怒りをいだいていて、弟を殺そうと思っていました。
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