「拡張率」は200%──。2012年のLCC就航当初と現在の国内線数を比べると、目を見張る結果が出た。
前述したジェットスター・ジャパン(JJP)と東西の双璧を成すのが、大阪を拠点に急拡大するピーチ・アビエーションである。
「日本海の海鮮と銘酒を楽しむ最強グルメ旅!」。キャッチーな触れ込みとともに3月、関西国際空港~新潟路線が新規就航した。ピーチはターゲットを若い女性に定めて、SNSのインフルエンサーを駆使したマーケティングで客をつかんできた。
大阪女子は新潟へ行きたくても、何しろ不便だった。新幹線なら東京を経由し4~5時間、運賃は2万円以上かかる。それがピーチだと1時間10分、運賃は4190円~で、JAL/ANAの3分の1以下だ。すぐに人気路線となり、搭乗率は85%を記録する。
ピーチのコンセプトはずばり「空飛ぶ電車」。180人乗り中型機を使って、新幹線やJAL/ANAに価格破壊を仕掛けている。
利用者アンケートでは、LCCを利用したことがある人は20%強(国内線)にとどまった。乗った理由は運賃が安いから。航空自由化が早かった欧米や東南アジアでLCCシェア(国内線)が30~50%もあるのを踏まえると、日本でLCCの成長余地は大きい。
その収益構造をざっくり解説すると、1便180万円の収入に対して運航費用は160万円程度。20万円の利益を捻出するために、無駄を徹底的に省く。搭乗率への執念は、席ががら空きでも走る新幹線の比ではない。LCCでは搭乗率90%はザラで、80%を切る路線は撤退も辞さない。
そんなLCCが勃興する以前は、新幹線対JAL/ANAが東京~大阪で50年余りにわたる攻守戦を繰り広げてきた。
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