東海道新幹線では2015年に焼身自殺事件、今年は殺傷事件が発生。17年末には、新幹線「のぞみ」で台車トラブルも発覚した。台車製造元である川崎重工業幹部が、「運行を続けていれば大惨事につながっていたかもしれず、おわびのしようもない」と猛省するように、新幹線としては初の重大インシデントに認定された。
本誌が実施した利用者アンケートでは、新幹線利用者の8割強が東海道新幹線を使っている(下図参照)。1日に47万人を運ぶ大動脈のセキュリティーや安全性の脆弱さに不信の念を抱く国民は少なくないだろう。
飛行機には災害が襲った。9月、台風21号による高潮の影響で関西国際空港が水浸しになった。関空連絡橋にタンカーが衝突し、海上空港の関空が孤立した。
関空は空港民営化の先行事例だ。関空を運営する関西エアポートの初動対応が遅れたことで、8000人もの乗客が閉じ込められた。「これは天災ではなく人災だ」(航空会社幹部)という声が絶えない。
災害大国ニッポンの交通手段を選ぶ基準として、「災害対応力」や「安全性・セキュリティーの徹底」が利用者から求められる時代になったことは間違いない。
切磋琢磨の競争で
悉く打ち破った世界の常識
やられたらやり返す──。1964年に東海道新幹線が開業して以降、新幹線と飛行機は熾烈な戦いを繰り広げてきた(下図参照)。
その主戦場は、500キロメートルを移動する東京~大阪である。
戦いの主軸は「時間と運賃」だった。飛行機のドル箱路線で、新幹線は鮮烈なデビューを飾った。開業翌年の65年に「ひかり」で3時間10分だった所要時間が、92年に300系「のぞみ」で2時間30分まで短縮した。驚異的な追い上げに、飛行機陣営が焦ったことは言うまでもない。
しかし、飛行機は羽田空港発着の便数の増加により、所要時間が45分から現在の65分へ延びてしまった。
そこで飛行機が仕掛けたのが、新幹線とは異なり、グローバル化を背景にしたサービス拡充や運賃施策だった。
大量輸送と定時運行で攻める新幹線と、上質なサービスとマイルによる顧客囲い込み戦略で攻める飛行機。両者が切磋琢磨することで、「距離が400キロメートルを超えれば飛行機の勝ち」「所要時間が3時間以内ならば鉄道の勝ち」という世界の常識を悉く破った。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。