タケハニヤスビコの叛乱②
この後、ヤマトトトヒモモソビメは、オオモノヌシの妻になりました。ところが、その神はいつも昼間は来ないで、夜だけ通って来るのです。そこでヤマトトトヒモモソビメは夫に、
「あなたはいつも昼間はお見えにならないので、はっきりとそのお顔を拝見することができません。どうかもう少しいてください。明日の朝、麗しいお姿を仰ぎ見とうございます」
と言いました。するとオオモノヌシは、
「それはもっともなことだ。私は明日の朝、あなたの櫛箱(くしばこ)に入っていよう。私の姿に驚かないでくれ」
と答えました。
そこで、ヤマトトトヒモモソビメは心中密かに怪しく思って、夜が明けるのを待って櫛箱を開けると、そこには、美しい小蛇(こおろち)が入っていたのです。その長さも太さも、ちょうど着物の紐のようでした。
ヤマトトトヒモモソビメはそれを見た途端、驚いて叫びました。すると、オオモノヌシは恥じてたちまち人の姿になって妻にこう語りました。
「あなたは私が驚くなと言ったのに、それを我慢できず大声をあげて私に恥をかかせた。今度はこちらがあなたに恥をかかせてやろう」
オオモノヌシは大空を踏みとどろかせて三輪山に登っていきました。
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