書籍化しました!
“よむ”お酒(イースト・プレス)
本連載『パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!』が本になりました。
その名も『“よむ”お酒』。
好評発売中!
ひとり飲みや、晩酌のお伴にぜひどうぞ
酒は百薬の長(笑)
スーパー銭湯のサウナに入って室内に設置されたテレビを見ていたら、空欄に入る字を当ててことわざを完成させるというクイズにタレントが答えているところだった。「〇は百薬の長」という問題に、「これはもう完璧」といった自信満々の表情を見せ、「酒は百薬の長!」と答えると、画面がピカピカ光って「正解です!」と司会者。
私は汗をダラダラと流しながら、「酒は百薬の長」という言葉を頭の中で繰り返し、いやいやいや、さすがにもう今の時代、胸を張って「酒は百薬の長!」とは言いにくいよなーと思った。酒の害の様々な面が科学的に明らかになった今である。言うとしてもせめて「酒は百薬の長(笑)」と表記するぐらいのニュアンスにはしたいところだ。
調べてみると「酒は百薬の長、されど万病の元」という定型の文句もあるそうで、まあ昔から「酒は百薬の長、ただしほどほどであればね」ぐらいの感覚で使われていた言葉なのであろうけど。
酒に関することわざ・格言
酒に関することわざというと、その他に、「酒は飲んでも飲まれるな」が思い浮かぶ。ことわざというか、格言か。これはよく分かる。「酒にコントロールされるな、酒をコントロールせよ!」ということだ。「酒が酒を飲む」という言葉もあるらしい。酔いが進んだら酒を飲んでるのはもはや自分の意志ではなく、酒そのものなのだ!という。インパクトのある言葉だ。
それに対して「酒は百薬の長」式の、酒飲みに都合のいい言葉でいえば、これはどうか。「朝酒は門田を売っても飲め」。「門田(かどた)」というのは、家の門のそばにある最も大事な田んぼのことだそうで、それを売り払ってでも飲んだ方がいいぐらい朝酒はうまいよ、という意味だ。いやいやいや、いくら普段の仕事時間から解放された朝の酒が気持ちいいといっても、「門田」を売るほどでは絶対ないだろう。ぜひ、落ち着いて考えてみて欲しい。
また、贅の限りを尽くすようなことを「酒池肉林」と言う。酒が池の水ほど大量にある状態。体ごと飛び込んでガブガブ飲むような。これもまた「門田」を売るやつと同じ類の、酒に対する過剰なテンションを感じる。そんな例えになるほど、酒というのは贅沢を示す基準だったということだろう。
酒に関することわざ・格言って、他にもなんかあったはずだよな、と考え込み、「あ、そうだ、『酒は天下の回りもの』だ」と思い当たった。そしてそれから少し遅れて、「いや、酒じゃない、金だ」と思い直した。
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