「普通」なんか目指さなくていいのです
とても敏感な子、繊細すぎる子に不安を抱えている親御さんから、さまざまな状況への質問が寄せられます。この章では、そうした具体例に基づいて話を進めながら、HSCの性質に理解を深めていただこうと思います。
親が子どものことで悩むというのは、何かに対して「うまく対処できない」ときです。そこで感じているのは、大きく分けるとふたつの気持ちです。
ひとつは、子どもが「普通にできない」ことへの不安。
もうひとつは、「自分もまたそれが苦手だ」という場合の不安。
「普通にできない」と、社会生活を営んでいくうえでいろいろ不自由なことが発生します。しかし、「普通」というのは主観的なものですし、その社会の中だけで通用する常識でしかなかったりします。神経発達症の子どもを連れて海外で生活するようになったら、日本で気になっていたことが全然気にならなくなったというご家族もいます。普通であること、他の子と同じようにできることを、あまり意識しすぎないほうがいいのです。
一方、自分自身が苦手で苦労してきたことに対しては、子どももうまくできないと同じような苦労をすることになりそうだと心配になります。その根っこには、自分の子だから似ている、遺伝しているかもしれない気持ちが働いています。それで、苦手を克服させることを一生懸命考えてしまう。じつは、自分自身の苦手意識が背後にあるのです。
その逆で、「自分は苦手じゃなかったのに、なぜこの子はできないのか」と思うことがある人もいるかもしれません。その場合も、だからこそ克服させたい、普通にできるようにさせたい、という気持ちが強まっていきます。
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