チーズ山脈

「ポルトガル食堂」の連載でもお馴染みの馬田草織さんの最新刊『ムイト・ボン!ポルトガルを食べる旅』の特別公開。ポルトガル中部の山の頂近くの宿で、ポルトガル3大チーズの1つ、羊のミルクで作る芳醇なケージョ・デ・セラ・ダ・エストレーラを味わいます。

3章 セラ・ダ・エストレーラ チーズ山脈

 チーズ好きにとって、ポルトガルは宝の山だ。地域ごとに個性豊かなチーズがあって、しかも値段も手頃。輸出する前に地元で消費されてしまうものも多いから、売り場で気になるチーズを見つけてはつい買って、旅の荷物を増やしてしまう。

 私にとってのポルトガル3大チーズは、まずは豆腐のようにふるふると柔らかいケージョ・フレシュコ。ケージョはチーズ、フレシュコはフレッシュの意味で、新鮮さが命のチーズだから現地でしか食べられない。以前訪ねた農家では、羊や牛の搾りたてミルクに朝鮮アザミのおしべから作ったカルド(凝固剤)を加えて圧をかけて固め、さらに小さなカップに移して寄せ豆腐のように冷やし固めていた。穏やかなミルクの風味とコク、ほんのり甘みもある。新鮮さが命だから、なんといっても市場で出来立てを食べるのが一番だ。

 つぎは大西洋の南に浮かぶアソーレス諸島の一つ、サン・ジョルジュ島の牛のミルクで作ったケージョ・デ・サン・ジョルジュ。牛のミルクのまろやかなコクとうま味、かすかにぴりっと締まる独特の辛味がある。ほろっと崩れる固めの仕上がりで、専門店はもちろん、スーパーでも見かけるので買いやすい。ちびちび削ってほどよいボディの赤ワインと楽しむと、ワインかチーズどちらが先かという感じで、いつの間にか無くなっている。

 そして横綱が、ケージョ・デ・セラ・ダ・エストレーラ。羊のミルクで作る豊満な円筒形のボディは、熟成するとうま味のかたまりのような中身がとろりと柔らかくなり、それをすくってパンやクラッカーにのせる。ポルトガルの友人曰く、クリスマスや復活祭など大切な時に家族みんなで食べる、特別なハレのチーズだそう。

 このチーズの名前は、産地である山脈の名前でもある。セラは山脈、エストレーラは星。ポルトガル最高峰のセラ・ダ・エストレーラは、星の山脈というロマンティックな名前を持つ一方で、チーズ好きにはたまらなくおいしそうに響く。このチーズの産地に、土地の魅力を生かした宿があると聞き訪ねることにした。もちろん、名産の横綱チーズも食べたい。

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ムイト・ボン!ポルトガルを食べる旅

馬田草織

人生を変えてしまうような味に会いたい! ポルトガルの食をまるごと味わうコラム満載。家庭のキッチンから街角のレストランやカフェまで、縦横無尽に訪ね歩いた、めくるめく食旅エッセイ!

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コメント

yoshinon チーズ山脈!! 3ヶ月前 replyretweetfavorite

saoribada ポルトガルのチーズ山脈で生まれる、最高峰チーズについて書きました。 3ヶ月前 replyretweetfavorite

saoribada ポルトガルの 3ヶ月前 replyretweetfavorite

kizuki_donuts ポルトガル行きたいなあー! 3ヶ月前 replyretweetfavorite