混合戦略と繰り返しゲームの基本 囚人に「協力」を促すおうむ返し

ゲーム理論を基礎から学んでみよう。身に付ければ、大きな武器になる。渡辺隆裕・首都大学東京大学院経営学研究科教授が誌上講義をしてくれる。

(前回「チキンゲーム、コーディネーションゲーム 勝利を呼び込むコミットメント」の続き)

 これまで学んできた戦略形ゲームは、いずれもナッシュ均衡を探し出すことができた。これに対して、一見、解がないようなゲームもある。

 例えば、じゃんけんだ。勝ちを1、負けをマイナス1とした利得表(下表)を眺めると、確かにこれといったゲームの解はないように見える。

 しかし、答えはある。私たちは相手に悟られないよう、でたらめにグー、チョキ、パーを出しているはずだ。この通りにグー、チョキ、パーを、ランダムに3分の1の確率とするのが、解なのである。

 こうしたゲームでは、一つの戦略を確実に選ぶ(純粋戦略)のではなく、戦略を確率的に選ぶと考える。これを「混合戦略」と呼ぶ。

 ゲーム理論の創始者にして、コンピューターの父とされる数学者、フォン・ノイマンらがまず目を向けたのは、この考えだった。

 サッカーのペナルティーキック(PK)戦もしかりだ。右に蹴るのが得意なキッカーに対しては、キーパーはボールが右に来そうだと読む。キーパーが右と読むなら、キッカーは逆の左に蹴りたい。お互いにこの状態がいいという定まったものがないのだ。


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 こうした混合戦略の計算過程はここでは省くが、右に蹴るのが得意なキッカーは、「キッカーが7分の3の確率で右へ、7分の4の確率で左へ蹴る」「キーパーが7分の6の確率で相手から見て右へ、7分の1の確率で相手から見て左へ跳ぶ」がナッシュ均衡となる。

 キッカーにとっては、不得意な左へ蹴る確率を高くするというのが、このゲームの答えだ。

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