第11回 複利とレバレッジの話(応用編)

「FX」という言葉の意味は知らなくても、FXで億単位の利益をあげていた主婦がいたことを覚えているひとも多いのでは? FXとは「Foreign Exchange」、つまり外国為替相場の動きを読む超ハイリスク・ハイリターンの商品です。そんな危ない投資でなぜ、素人の主婦が大金を得ることができたのでしょうか。そこには、運と複利とレバレッジのカラクリがありました。(『いきいき』2012年11月号より転載)

ここまで、資産運用(投資)において複利とレバレッジがいかに重要かを述べてきました。今回はその応用編として、なぜギャンブル好きの主婦が億万長者になれたのかを考えてみましょう。

2007年4月、東京都に住む59歳の主婦がFX(外貨証拠金取引)で3年間で4億円を超える利益を得、約1億4000万円を脱税していたことが発覚しました。同じ年の7月には、兵庫県の市役所に勤めていた33歳の女性が両親とともにFXで7億円超の利益をあげ、約2億5000万円を脱税したと報じられました。

これらのニュースが衝撃的だったのは、主婦や市役所職員が億単位の利益をあげたことが税務調査によって証明されたことです。これまで「私は株で大儲けした」と本を書くひとはたくさんいましたが、ほんとうに儲かったかどうか知る術(すべ)はありませんでした。ところがこの事件では、素人が億万長者になれることを国が「保証」してくれたのです。

FXというのは、レバレッジをかけて米ドルやユーロなどの外貨を売買することですが、ここでは詳しい仕組みを理解する必要はありません。為替相場は上がるか下がるかしかないのですから、そこだけを見ればコイン投げや丁半ばくちと同じです。

こうしたゲームの特徴は、「ゼロサム」だということです。「SUM(サム)」というのは合計のことで、ゼロサムゲームでは勝ちと負けを合計すると必ずゼロになります。すべての日本人が賭け金100円で参加する「全国じゃんけん大会」が開催されたとします。赤ん坊から老人まで1億2000万人がじゃんけんに挑み、1回戦で勝った6000万人が200円を獲得します。2回戦に勝つのは3000万人で、賞金は400円です。

この単純なゼロサムゲームを続けていくと、21回目で114人が1億円を超える賞金を手にします(厳密には途中で参加者の人数が奇数になるので調整が必要です)。最後まで勝ち残れば、賭け金の総額である120億円(100円×1億2000万人)を独り占めできます。トーナメントでは誰かが最後まで勝ち上がるので、「100円の元手が120億円になる」という信じられない話が必ず実現するのです。

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