「ユウカさん、おかえり。夕飯も出来てるから食べてってね」
市場から帰ってきたユウカと晶に、母セツ子は声をかけた。
「ありがとうございます、セツ子さん。今日持って行った20個のサンドアートは完売しましたよ」
ユウカが嬉しそうに報告すると、
「あら、そう! すごいわね。ユウカさんは、モノを売る才能があるのかもね」
セツ子は満面の笑みで、ユウカを褒めた。
「いやー、それほどでも。セツ子さんの作品が魅力的だったからです」
「ふんっ!」晶は白々しい顔で2人のやりとりを見ている。 もちろん、晶には、「作品が魅力的だった」からでも「ユウカにモノを売る才能があった」わけでもないことはわかっている。
ただ、事前にユウカに今日のことは内緒にしてほしいと言われたから黙っているだけだ。
ユウカにとっては、「沖縄で有名なサンドアーティストSETSUKO」の作品として、半分、だましたみたいな形で、サンドアートを売ったことは、どこかで後ろめたい感情があった。 それは、お客さんに対してもそうだし、セツ子本人に対しても後ろめたさを感じていた。
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