彼らの手には、清掃用の黒いビニール袋と、液体をこぼさないようにするプラスチックの大型槽。廃物を細かく切断するためのノコギリ。その他もろもろの大事な清掃道具。それから、各自のゴシック。
シンジツ放送局の正面門から、幸福安心委員たちは、正々堂々と踏み込んでいく。
不幸分子に逃げられる心配はないからです。私が、電波塔からすべてを操っている。その他の出口は、すべて電子的に封鎖。
ほら、今もガチャガチャと一生懸命、裏口のノブを回そうとしている。
でっぷりと太った男は、瀟洒で高価なスーツなど着ているけれども、ダラダラと額に汗を流して、いかにも不潔で不幸そう。
でも大丈夫、すぐに、その不幸と不安は取り除かれます!
私は、放送局じゅうのモニタを点灯させる。
あらゆるスクリーン、壁面POP広告、洗面台の鏡、それから不幸分子たちが持っているシンクフォン。いっせいに鳴り出す。幸福と安心の歌が流れ出す。
〈幸福なのは義務なんです♪ 幸福なのは義務なんです♪ 幸福なのは義務なんです♪
幸せですか? 義務ですよ? 果たしてますか♪〉
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