25歳のド新人がロングセラーを生み出すまで

売り込みをしないほうが、発見されやすい?

ロングセラー『百合のリアル』の著者の牧村朝子さんが、企画・構成・作画を手がけた小池みきさんと、編集を担当した今井雄紀さんをおまねきしておこなったトークイベントの模様をお届けするこの連載。最終回となる今回は、編集者の目にとまりやすい企画書の書き方や、編集者に見つけてもらうためのコツについて語ります。前回の記事はこちらからどうぞ。

左から今井雄紀さん、牧村朝子さん、小池みきさん

持ってきてくれた企画書をその場で講評

牧村朝子(以下、牧村) この中で、本に限らず、「企画書」ってものを書いたことがある方はいらっしゃる?

会場 (挙手)

牧村 ありがとうございます。企画書っていうのは要するに、何か実現させたいことがあったときに、「こんなアイデアがあるんです。一緒にやりませんか?」って伝えるための書類で……なんていうの、果たし状のフレンドリー版? みたいなものなんですけど。それを実際に、今回のイベントのご参加者の方から募集しまして、書いてきてくださった方がいらっしゃいます。ご紹介します。ゆずゆりさんです! よろしくお願いします。

ゆずゆり 本当に、編集の方に見ていただける機会というのはなかなかないので、2週間くらいで書いてきたんですけれど……これが本当に世の中に求められるものか、ということを見ていただければと思います。

今井雄紀(以下、今井) 質問いいですか。

ゆずゆり はい。

今井 お好きな海外ドラマはなんですか。

牧村 聞く必要ある!?

ゆずゆり 色々あるんですけど……「エレメンタリー」です。

今井 「エレメンタリー」。

牧村 なんで聞いたんですか!?

小池みき(以下、小池) いや、企画書のプロフィール欄に書いてあるから。

牧村 あ、企画書に海外ドラマの話、書いてあるのか〜! ちなみにこれ、企画書としては、必要な要素全部入ってます?

今井 これはもう、完璧に近いですね。

牧村 おお〜。

会場 (拍手)

目次案、「はじめに」、第1章の原稿があるといい

牧村 どうやってお作りになったんですか?

ゆずゆり 書籍企画書テンプレートを使いまして……

牧村 そんなのあるの!?

小池 すぐ出てくるよ。「出版 企画 テンプレート」とかでウェブ検索すれば。

牧村 あ、そうなんだ〜!

今井 ここに1つ付け加えるとすれば、目次案ですよね。一番いいのは、書籍テンプレートで出てくる項目に、目次案と、「はじめに」と、第1章くらいの原稿がついていること。このテーマは面白いんですが、その上で、それを本1冊分、8万字とか10万字とか書けるのかっていうことを見せてもらいたいんですよ。(企画者が)それだけの分量を書けるのか、また、人を惹きつける文章を書けるのか、ということを見せていただくために、目次案と原稿があるとありがたいですね。

小池 ブログ記事の2000字・3000字をうまく書ける人が、本の10万字をうまく書けるかというと、そうとは限らないんですね。逆もまた然りで。

今井 1回オンラインで書くといいんじゃないかと僕は思いますね。noteとかに書いてみるといいと思います。(編集部注:このあと、ゆずゆりさんはnoteを書いてくださいました

牧村 なんでnoteがいいんですか?

今井 いま、たくさん人がいるからです。

牧村 必然的に、編集さんが見つけてくれる可能性が高まると。

小池 かなり編集者は見てますもんね、noteを。バズってる記事とかめちゃめちゃ見てる。

今井 そうですね、いろんな方がいらっしゃるとは思うんですけど、基本的に、編集者って、拾うほうが好きな人間なんですよ。編集者に見つけてもらいたかったら、売り込まない方がいいぐらい。

牧村 ええ〜!?

「誰でもいいから私を愛して」じゃモテない

今井 あとはね、書く側が「自分はここが面白い」と思ってるポイントが、編集者側の感覚とずれている場合もあったりするので。基本的に、「居るだけ」の方がいいですよ。今は、面白いものを見つけてもらえる可能性が高まっていて、正直者が馬鹿を見ない世の中になってきていると思うので……特に文筆に関しては。

小池 「売り込まない方がいい」という話について勝手に補足します。それがなんで駄目な可能性が高いかというと、売り込む側が、「誰でもいいから私を見つけて!」って態度になってしまいがちだからなんですよ。

牧村 ああ〜!!

小池 恋愛でも、「誰でもいいから私を愛して」って人はよほどの魅力がないとモテないでしょう。それと同じ。売り込みに行くのであれば、「この編集者と一緒に作るんだったらより良いものが作れる」という気持ちを持って、相手を見て売り込みに行った方がいいです。「あなたとこの仕事をしたいです」って言えるなら、売り込みは無意味じゃないと思う。

今井 それはおっしゃる通りです。「頼むから名指ししてくれ」って思うんです、ぼくら(編集者)は。「誰でもいいから」タイプの人の売り込みはずさんですね。「絶対コピペだな」ってメール、たくさん来ますよ。宛名すら間違ってることとかあるし。

牧村 ひどい!

今井 もうほんと、その編集者をツイッターで探して、5ツイート見るだけでも全然違うと思うんですよ。「たこ焼きお好きなんですね! このお店オススメです。ところでこの企画……」ってなった方が、全然まし。編集者自体は、自分の出したい本と近いものを探して、それを手がけている編集者に声をかければいいし。

小池 本って、奥付に編集者の名前が書いてあるんですよ。もし書いてなくても、出版社に問い合わせるか、「この本を作った編集さんとご一緒したいです」という風に連絡すればいい。その人に本当に対応してもらえるかはともかく、そのくらいの気合いはあっていい。

今井 そうですね。書店で、表紙見て、それから奥付見てるヤツは……編集者です!

会場 (笑)

今井 「5刷いってんだ、すげえな、この本は誰が編集してるんだろう?」みたいな。出版社によっては編集者の個人名を出さない方針のところもあるんですけど、そうなったらあとがきを見るんですよ。

小池 謝辞ですね。

牧村 「編集担当の○○さんに感謝します」みたいなあれ。

本を広めるためにしたこと
この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
25歳のド新人がロングセラーを生み出すまで

今井雄紀 /小池みき /牧村朝子

cakesの人気連載「ハッピーエンドに殺されない」の著者、牧村朝子さんが2013年に出版した初の著書『百合のリアル』。発売直後から話題となり、現在では大学入試問題に採用されたり、増補版・台湾版も発売されています。この本を書き上げた当時...もっと読む

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません