当然だけれども、私たちは受け付け前で、止められた。
紺色の制服を着た警備員が、両腕を背中の後ろに組んで立ち塞がる。
「君たち、関係者以外は立ち入り禁止だよ。さあ戻って」
「おじさん。僕ら、幸安インターに入るために社会見学してるんだ。学校で、そういう課題が出てさ。これ学生証。ちょっとくらい見せてくれても、いいでしょ?」
「社会見学だって? 見せてみろ。……へえ。中央区第一中学か。名門だな。親戚で一番頭のいい甥っ子も、ここに入学したんだぜ。紹介状やらなんやら、手続きが大変だった、って言ってたなあ」
「なんて名前の子?」
漣くんは何気なく話しながら、後ろ手にシンフォを操作している。
スクリーンに指を滑らせ、学校の名簿を開いた。警備員のおじさんが言った名前を、器用に検索。後ろにいた私に、わずかに振ってみせる。私は目をまるくし、でもとっさに、漣くんが言いたいことがわかった。なんとか理解できた。