心のねがいはまた眼の光である。どんな景色も、常時飽くことなく愛でられるものではないが、喜びに満ちた人間の労働によって豊かにされる。田畑はなだらかに、庭園は美しく、果樹は実り、清楚な心あたたまる家屋敷の点在、生きものの声があざやかに響きわたるのである。音のしない大気に快いものはない。それが快いのは、小鳥の高声、昆虫のうなり声や鳴き声、人間の太い調子のことば、子供の気ままなかん高いなど——低い流れに満ちているときだけである。生活の術が学ばれるにつれて、あらゆる美しいものもまた必然であることが、ついには理解されるであろう。(「この最後の者にも」より引用)
美術館に行くのがわりと好きなのだけど、三菱一号館美術館はとくにお気に入りの場所だ。
だって地方からやって来たときも、東京駅すぐそばだから行きやすい(駅から乗り換えなしで、新幹線を待つ時間にも美術館へふらっと行けるなんて! 素敵すぎる)。それにお庭が美しくて、展覧会の合間に窓からゆっくりお庭を眺めるのも楽しい気分になる。広すぎなくて、ぜんぶ見終わっても疲れていないのも嬉しい(それにしても美術館って、なんで最初ほどしっかり見ちゃうんでしょうね? 最初よりも中盤のほうが見所おおいのに、そこに辿りつく頃には、疲れてとばし見しちゃったりする)。
で、そんな素敵な三菱一号館美術館にて、現在『ラファエル前派の軌跡展』という展覧会が開催されている。
実は『ラファエル前派の軌跡展』は、「ラスキン没後200周年!」というキャッチコピーのついた展覧会らしい。しかし告白しよう。このキャッチコピーを見たわたしは、「ラスキンを知ってる人ってどれくらいいるんだろう……」と勝手にラスキン知名度を心配してしまった。いや完全に余計なお世話なわけですが。
実際、『ラファエル前派の軌跡展』に足を運んでみると、意外とがっつりラスキン押し、ラスキンの昔のノートとか落書きがたくさん展示されていた。ラスキンファン(わたし)としてはめちゃくちゃ嬉しい。しかし、ラスキンファン以外のことまで余計なお世話の心配が及んでしまう。
ら、ラスキン、きみはここまで日本で知られているのか!?
……そんな失礼な心配をしてしまったお詫びといってはなんだけど、「こう読めば楽しい! ラスキン入門☆」の記事を書こうと思い立ったのである。
こう読めば楽しい! ラスキン!
コツは以下の3つ。
1.ラスキンが擁護した「ラファエル前派」のことを知る
2.ラスキンとラファエル前派の関係を知る
3.ラスキンのロマンチストっぷりを知る
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