作詞と振付のオマージュと被りとパクリ問題
竹中夏海(以下、竹中) 作詞って似せる気なんて更々なくても、潜在的に記憶してしまってて既存の歌詞に似ちゃう時ってない?
児玉雨子(以下、児玉) 幸い言葉なので、そういう場合は「もしかしたら……」とネットで検索します。
竹中 あぁ、なるほどね! そういうことはよくある?
児玉 あります。特にタイトルとサビ一行目をググります。
竹中 印象的だもんね。
児玉 誰よりも自分を一番疑うようにしていて。バッて書けたやつは、もしかしたら今まで見聞きしているものや読んできたものの丸パクりになってるんじゃないかって怖いんですよ。
竹中 すっごい分かるよ……。
児玉 あぁうれしいです!(笑)私の場合、所詮言葉なので何かしらひっかかる時もあるんですけど、全部かぶったっていう事はほとんどないですね。それでもいつも怖い。「良い曲書けた」なんて死んでも言えない。
竹中 自分から生まれたものじゃないのかも、って?
児玉 はい。言葉って蓄積してきたものだから、厳密にはオリジナルってないと思うんですよ。オリジナリティは確立しなきゃいけないけど。
竹中 そうだね。それは作曲も振付もすべてに言えることだよね。でも言葉は検索できるのが羨ましいなぁ。その点、振付は記憶頼りだからカブりが本当に怖いの!
児玉 そっか! てぇへんだなぁオイ……。
竹中 世に出すまで慎重に何度も「これ、あの曲と似てないか? 大丈夫か?」って動画検索しながら確認するけど、結局それも自分の記憶できてる限りの中でだからね。
—— それでもカブってきちゃうってことは……
竹中 あるある。それこそキャッチー問題が絡んでくる。特に私は振付師だけじゃなくテレビでコメンテーターとか、文章を書いたりするからこその思考回路なのかもしれないけど、キャッチーな振付には必ずキャッチーなエピソードが付いていると思ってて。例えば秦基博さんの「スミレ」っていう曲の振付をした時も、人差し指と手のひらを合わせるポーズをしてるんだけど、これは「スミレの花」の手話らしいのね。振付にこういうエピソードがあるとアーティストさんが取材や番組でもしダンスについて聞かれたときに話せることがひとつ増えるでしょ。
児玉 すげえ。そうですね、キャッチーだ。
竹中 実際音楽番組でも「次披露の新曲は◯◯ダンスが見どころです!」って紹介されることが多いしね。でも、そうなるとやっぱり指は10本、腕は2本しかないし、ハンドマイクを持てばその半分になるし、バリエーションは無限ではないと思うんだよ。で、カブせる気なんて更々なくても、お披露目後に「◯◯と同じ振付だ~!」と無邪気な感想を見つけたりすると不甲斐なさで死にたくなる。
児玉 一週間寝込みますね……。
竹中 そう。皿割れるくらい膝から崩れ落ちる。でも実際にその◯◯を見てみると案外「けっこう違うやんけ~」ってことが多いんだけどね。だけどダンスを専門としてない人から見ればこれとこれは同じに見えるんだなぁーと、勉強にもなる。
児玉 あぁ、そういうことありますね。
竹中 ライブを見てくれる、音源を聴いてくれる人たちのほとんどは作曲の、作詞の、振付のプロじゃないからね。私たち的には「一緒ではないぞ?」と思っても、そういう受け取り方があるんだってのは、常に頭の片隅に置くようにしてるかな。
—— TWICEとAKB48の「ハッシュタグポーズ問題」ってあったじゃないですか。ファン同士で「真似した」「してない」と議論になったやつ。実はそれよりずっと前に竹中さんが寺嶋由芙さんの「#ゆーふらいと」で同じような振り付けをしていたというオチがつくんですが、ああいうのはどう思われますか?
竹中 もう、そんな、ハッシュタグなんて振りで表すならそれしかないじゃない。「振付師さんを責めないであげて~」って心が痛い。
児玉 作曲も縛りは多いけど、メロにも検索システムがありますし……。でも振付って確かにどうググればいいんだ。
竹中 「キーワードになってる言葉+ポーズ」で画像検索して出てきたものは避ける、くらいならできるんだけどね。SILENT SIRENの「恋のエスパー」って曲では振り作り中「この手の形どうかな?」と思ってたポーズが「エスパー ポーズ」で画像検索したらたまたま『エスパー魔美』と同じで。でもこの場合は昔のアニメだし「分かる人は分かってくれたら良いなぁ」とあえてそのまま採用した。
児玉 あぁでも、見つかるんですね! オマージュと被りとパクリ問題は話が尽きませんな……。