酒と地面 私の失敗【スズキナオ】

今回はスズキナオさんによるお酒の失敗のはなし。先日のパリッコさんのお話もなかなかにハードでしたらが、今回のお話も負けず劣らず……。でも結局飲むこと自体はやめないんですね。
なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、ぬるーく書いていくリレーエッセイです。過去の連載へはこちらから。

酒の失敗で得るものなし

「酒には失敗がつきもの」「酒で失敗して大人になっていくのだ」というようなことは言いたくない気分だ。私自身が年齢を重ねてそう思うようになったのか、日本の社会における酒のあり様が変わったことによるものなのか、そのどちらもなのかもしれないが、酒の失敗を嬉々として語るようなことは今は野暮なものに感じる。

その失敗が自業自得レベルで済んでいればまだいいが、酔って他人に迷惑をかけた話を「いやー!やってしまいました!」という感じで大っぴらに披露するなんて、酒のイメージを悪くするだけ。いいことなし。というか、酒で失敗なんてしない方が絶対いいに決まっている。

私には少なくとも、過去の酒での失敗から学べてよかったことなんてない。どれも最悪である。幸いにして、他人に迷惑をかけたというよりは自業自得の範疇だとは思うのだが、会社員時代に何度か悲しい経験をした。

歩いて帰れる距離感が危ない

当時、私は東京の豊島区に住んでいて、池袋駅から地下鉄に乗って2駅先が最寄り駅。JRの池袋駅からでも30分ぐらい歩けば家に着くという距離感だった。職場は渋谷で、渋谷で多少深酒しても山手線の終電で池袋までたどり着きさえすれば帰ることができる。ほどよい距離を歩いて帰るのは適度な酔い覚ましにもなり、「ここに住むことにしてよかったな」、と気に入っていた。しかし、その歩いて帰れる距離感が“逆に危ない”ということがある。

「どうせちょっと歩けば帰れるんだし」と油断が生まれ、池袋でもう一軒寄ったりしてしまうのだ。「人間、あとちょっとというところが一番危ない」と、本で読んだ気がする。誰が何について書いた本だったかまったく思い出せないが。

とにかく「家まであともう少しだ」と思って余計な酒を飲み、ようやく家へ向かうことにするのだが、ついさっき“適度な酔い覚まし”などとすかした感じで書いた30分という距離が、酔っていると途方もなく遠いものに感じる。特に夏の夜、アスファルトがやけに心地よさそうに見えるのだ。酔って体が熱くなっているからなおさらである。

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スズキナオ /パリッコ

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