こじらせる前に対処できたら治りが早い
いまはだいぶ変わってきましたが、かつての精神医学は、心の病が身体症状としてあらわれたら、薬で神経に直接作用を及ぼして治すというダイレクトなやり方をしていました。
ぼくは児童精神科医として子どもたちを診ていましたから、なんとか薬を使わないでよくする方法はないかと考え、そこから東洋医学の分野のことなどをいろいろ勉強するようになりました。
まず出合ったのが、漢方薬です。
医師が処方する薬にしても、市販の薬にしても、一般にいうところの薬とは、症状に効く成分を化学的に合成して人工的につくられたものです。だから必ず副作用がある。
漢方薬というのは、古来、効果があるといわれてきた成分の入った植物や鉱物などを加工して、「生薬」としたもの。いくつもの成分が調合されていますが、相対的なつながりを重視するので、副作用を起こしそうなものを軽減する成分も調合されています。
漢方薬には、病院で処方される薬のような強い即効性はありませんが、じわりじわりと効き、長く飲みつづけても副作用の危険が少なく、成長期や薬に敏感な人でも安心なのです。
東洋医学には「未病」という考え方があります。まだ病気にはなっていない状態のこと。「これは○○○病ですね」という診断のつかない状況をケアする方法があります。未病のうちに対処して病気にならないようにすることを、治療の目的にしているのです。
先ほどの、背中の緊張をほぐすというのは、まさにそのひとつ。
ぼくは身体をさわって治療する方面のプロではありませんから、本格的なことがわかるわけではありませんが、それでも、猫背でうつむいている人は、歩いている姿を見るだけで「ああ、いろいろ不調があって、生きづらそうだなあ」というのがわかります。
さわると本当に背中がガチガチ。ちょっとさわって、「こういうふうにしてほぐすとラクになるよ」とアドバイスしたり、整体や指圧をしてくれる人を教えてあげたりしています。
こじらせると、心身のつらさがどんどん大きくなっていきますし、治るまで長引きます。
疲労は生体アラームのひとつ。ちょっと疲れている段階ならば、1日、2日休むと回復してすぐに元気になります。早い段階だと回復も早い。でも、ガマンして無理をつづけると、疲れがたまってしまう。本当に疲れ果ててしまってからでは、長引きます。
未病の段階で手当てができるほうが絶対にいいのです。
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